アメリカでは現地時間の3月11日から、サマータイムと呼ばれるdaylight saving time(デイライト・セービング・タイム)が始まりました。欧州では導入している国も多いですが、日本は現在実施していません。

 日照時間が長い夏の間、標準時間を繰り上げるこの制度はどのように誕生したのでしょう。時の研究家、織田一朗氏の連載第6回は年間で8か月間にも及ぶ「米国のサマータイム」を取り上げます。

戦時下に急がれた導入

欧米では日照時間が長くなると標準時間を繰り上げる夏時間が実施されますが、その背景には何があるのでしょうか(写真:アフロ)

 夏の間だけ、標準時間を繰り上げるサマータイムが、3月から欧米で始まる。欧州のサマータイムは3月の最終日曜日(25日)から10月の最終日曜日(28日)までの7か月間だが、米国では、2007年にさらに1か月間拡大されたので、何と1年の3分の2がサマータイムとなる。

 サマータイムは、夏冬で日照時間の差の大きい地域ほど効能が高まるので、日本は「適地」と言えるが、日本では一向に実施する気配もない。戦争直後の占領期に、GHQ(連合国軍総司令部)の意向で米国の制度が導入されたが国民に不評で、占領体制の終結とともに廃止されている。近年にも、「エネルギー危機」が起きるたびに、何度か議論が蒸し返されたが、法案の成立までには至っていない。

 米国では、『デイライト・セービング・タイム』(DST)と呼ばれ、今年は3月11日(3月第2日曜日)から、11月4日(11月第1日曜日)まで実施されるが、「エネルギー危機」が起きるたびに実施期間が拡大されてきた。しかし、もともと、国土が広い上に、地方自治体に広い権限が認められている連邦制が敷かれていることもあって、実施までには紆余曲折があった。

 サマータイムのアイデアを最初に考えついたのは英国だった。国会議員のウィリアム・ウィレットの「日照時間の少ない英国で、夏場により多くの太陽の光を浴びれば病気にかかることも減り、国民の健康も増進される」との純粋な考えだった。ウィレットは、1908年に「夏場の太陽を充分に浴びて国民の健康増進を図るとともに、照明費用の節約」を目的とした『システム・オブ・デイライト・セービング』法案を議会に提出したが、ヨーロッパ大陸との交通の混乱や、米国との経済取引への支障を恐れた議員たちの反対に遭って成立しなかった。

 このアイデアをちゃっかりと借用したのが第1次世界大戦下のドイツで、「労働時間を延ばして軍需物資の生産を増やす」ために導入し、同盟国のオーストリアも従った。あわてた英国は、同法案を復活させて可決し、1916年から実施した。ドイツは戦争の終結で廃止したが、フランス、デンマーク、スウェーデン、ノルウェー、ポルトガルがイギリスと同じく16年から、アイルランド、ウクライナ、ロシアが17年から導入した。