人口が減少し、社会の成長が見込めない時代といわれます。一方で、科学技術の進化が、高齢化の進む日本の未来を、だれにとっても暮らしやすい社会に変えるのではないかともいわれています。わたしたちは一体どんな社会の実現を望んでいるのでしょうか。

 幸福学、ポジティブ心理学、心の哲学、倫理学、科学技術、教育学、イノベーションといった多様な視点から人間を捉えてきた慶応義塾大学教授の前野隆司さんが、現代の諸問題と関連付けながら人間の未来について論じる本連載。5回目は「愛と幸せについて考える」です。


幸せの条件とは?

[イメージ]人間はどうすれば幸せになれるのでしょうか(写真:アフロ)

 私たち人間はどうすれば幸せになれるのでしょうか?

 第1回に、私が明らかにした幸せの4つの因子について少しだけ書きました。4つの因子を満たしていれば幸せなわけですが、もっと簡単に言うこともできます。シンプルな方が理解しやすいですよね。

 幸せの条件は、一言で言えば、愛です。愛すること。幸せでない人は、愛が足りない。幸せな人は、愛がある。足りている。それだけです。

 もう少し詳しく知りたいという方のために、幸せの条件を、二言で言うとすれば、自分を愛し、人を愛すること。自分への愛と、他人への愛。不幸な人は、自分への愛か、他人への愛の、どちらかが足りない、ということです。幸せな人は、自分への愛と、他人への愛が、十分にある。そして他人の範囲がひろいほど幸せです。

 さらにもう少し詳しく言うと、図1のようになります。
 自分を知り、人を知ること。
 そして、自分を愛し、人を愛すること。
 さらに、新しい自分をデザインし、新しい世界をデザインすること。

 これだけです。今日はこの図について説明しましょう。

晴れ渡った空のように、自分を知っているか

[図1]幸せな世界の基本

 まず、自分を知り、世界を知るということについて。

 世の中には、自分を知らない人が多いと思います。99パーセント以上の人が、自分を知らないのではないかと思います。

 いやいや、自分のことは知っている、とお思いかもしれませんが、どこまで知っているでしょうか。自分はどんな時に悩むのか、自分はどんな時に怒るのか、自分の強みは何か、弱みは何か、自分は他人からどのように見られているのか、他人をどのように見ているのか。自分は今何をするべきか。人生をかけてやるべきことは何か。みなさんにとって、これらの点はすべて明確でしょうか。晴れ渡った空のように、曇りなく、スカッと、理解できているでしょうか。

 何かが起きた時に、自分の心がどう動くかを理解していて、強みも弱みも理解していて、対処法もわかり、対処できれば、問題は解決します。要するに、自分を知っていれば、問題は生じません。生じてもすぐに解決します。なにしろ、自分らしく実行すればいいだけですから。

 つまり、皆さんの身の回りに起きているあらゆる問題は、あなたがあなた自身を知らないから生じているのです。

 いや、自分を知っていても、想定外のことが起きた時には対処できないではないか。そう思われるかもしれません。しかし、死生観も含めて、つまり、死の瀬戸際に自分が何をするかまでわかっていれば、どんな問題も最終的には解決します。死も含まれるわけですから(問題を解決するところは図1の最後の方なので、詳細はそこで述べます)。

 また、自分を知るだけでなく、世界を知っている方が、より、行動力や課題解決力は増します。世界はどうなっているのか。世界とは、あなたの家族や友人や職場やコミュニティーのような、あなたが直接触れ合う世界から、国家や大自然や宇宙といった、あなたとは間接的にインタラクションする世界まで含みます。世界がどう振る舞うかを知っていれば、生きやすいですよね。

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