大学入試センター試験の地理の問題で、ムーミンの舞台に関して出題ミスではないかとの指摘が相次いでいますが、ネット上の論争はなかなか論点が定まらないようです。ネットは多くの人の意見をぶつけ合えるというメリットがありますが、この利点を生かすためには論点を整理するというスキルが必要となります。

写真:アフロ

 出題ミスが指摘されているのは、センター試験1日目の地理Bの問題です。「ノルウェーとフィンランドを舞台にしたアニメ」として「ムーミン」と「小さなバイキングビッケ」を挙げ、舞台となった国とアニメの組み合わせを選ぶ内容でした。これに対して、ネット上では、ムーミンの舞台はムーミン谷という架空の場所なのでフィンランドにはならないとの指摘が相次ぎました。作品の中にフィンランド湾という言葉は出てくるそうですが、ムーミンの舞台は架空の設定であるムーミン谷ということになるようです。もしそうであれば、設問にはミスがあるということになるでしょう。

 一方、設問を擁護する人は、設問の中にある材料からフィンランドを類推することは可能であるとしてミスとはいえないと主張しています。

 しかしながら、この二つの意見は実は論点が合致していません。出題ミスを指摘している人は、設問に事実とは異なる可能性がある内容が記載してあること、もしくは、作品そのもの(テクスト)と、作品が書かれた背景は分離する必要があるという学術上の考え方を元に設問ミスがあると指摘しています。あるいは創作物をベースに地理学の問題を設定することの是非について議論しています。

 一方で、ミスではないとしている人はこうした部分には触れておらず、トラブルなく解けるかどうかや、推論する力を問う問題として良質かどうかを論点にしているようです。本来であれば、この二つは分けて議論すべきテーマであり、その上で、問題として適切であったかを問うべきでしょう。

 同じような話はかけ算の順序に関する議論でも見られました。小学校のテストで5×4は正解になり、4×5は不正解になるという話について、ネットでは侃々諤々の議論となりましたが、あまり論点が整理されているとはいえません。

 一部の人は、かけ算の交換法則(かけ算は順序を入れ替えても結果が同じになる)が成立しない場合があるという高等数学上の論点を論拠に、かけ算には順序があると主張しています。しかし、どちらでもよいと主張している人は「教員が言った通りに書けば正解」という安易な指導方法を問題視しているケースが多いようです。この2つの意見はいつまでたっても交わることがありません。

 最初の段階では、様々な論点が出てくるのは当然のことでしょう。しかし、ある程度、意見が出てきた後は、論点の違いを意識して発言するよう心がけていけば、最終的なコンセンサスを得られる可能性は高まります。

 今やネットは世論を形成する重要な手段となっていますから、議論の参加者はこうした知恵を身につけていく必要があるでしょう。

(The Capital Tribune Japan)

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