みう・みま対決を制して悲願の女子シングルスで初優勝した伊藤美誠(写真:田村翔/アフロスポーツ)

 伊藤美誠(17、スターツSC)が1年がかりで、ついに完全復活を果たした。1月15〜21日、東京体育館で開催された「天皇杯・皇后杯 平成29年度全日本卓球選手権大会」(以下、全日本選手権)の女子シングルスで初優勝。女子ダブルスと混合ダブルスでも優勝し3冠の偉業を成し遂げた。全日本3冠は平成26年度(2015年1月)の石川佳純(全農)以来の快挙である。

 昨年の全日本選手権で伊藤は、リオ五輪団体銅メダリストとして優勝候補の一人に挙げられながら、初顔合わせの大学生に逆転負けし、まさかの5回戦敗退に終わった。世界ランクトップ10に入る伊藤でも、全日本選手権を勝ち上がるのは容易ではない。なぜなら普段、国内選手との対戦機会がほとんどないため相手の情報が少なく、十分な対策が取れないからだ。この屈辱的な敗北に伊藤は、「自分が変わらなければ勝てない」と腹をくくり、トレーニング方法や用具の見直しに乗り出すこととなった。

 改善のテーマは「パワーアップ」だった。もともと伊藤の戦型は前陣速攻の異質攻撃型といって、卓球台に貼りつくようにして早い打球点とピッチで攻撃をたたみかけていく。またラケットの表と裏に性質の異なるラバーを貼り、特に裏側の「表ソフト」と呼ばれるラバーで回転の読みにくいボールを放って相手を翻弄する。だが、中国人のような豊富な回転量のボールとパワーで押してくる選手にはラリー戦で打ち負かされることがたびたびあり、陣営は伊藤にパワーをつけさせたいと考えた。

 実は昨年の全日本選手権前から、フィジカルの強化には取り組んでいた。そこからさらに下半身の強化に注力。威力のあるボールを打つには足から腰、腰から上半身へと力を伝えなくてはならないため、伊藤はことさらフットワークを鍛え上げた。また本人いわく「卓球と筋肉の使い方がよく似ている」との理由からボクシングもトレーニングに取り入れた。

 そして、もう一つ特筆すべきはラバーの変更だ。伊藤は昨年の全日本選手権直後、それまで使用していた日本製のラバーから中国製のラバー(通称・中国ラバー)に替えた。中国ラバーは日本製に比べ格段に粘着性が高く、ボールによく回転がかかるためパワードライブを打つのに適している。日本の選手では上背のある早田ひな(日本生命)がこれを使い、まるで男子のような威力のある両ハンドドライブを武器にしている。だが、使いこなすには強いフィジカルが必須。そのため小柄な伊藤はパワーアップのためのトレーニングに精を出し、ここ数年ほとんどやらなかった多球練習も積極的に行って自ら体をいじめ抜いた。