バレンタイン商戦でにぎわう百貨店、2017年(写真:つのだよしお/アフロ)

 2018年の日本経済の一大テーマはインフレ動向です。実質国内総生産(GDP)が数四半期にわたって潜在成長率を上回るなかで、労働市場は完全雇用に近づき、マイナスの需給ギャップはプラスに転じました。しかしながら賃金・物価に目を向けると、毎月勤労統計の所定内給与は0%台半ばで推移、消費者物価統計はコア(除く生鮮食品)こそ+0.9%と上昇基調にあるものの、そこからエネルギーを除いた新型コア(除く生鮮・エネルギー)はかろうじてプラス圏を維持するに留まっており、日銀の希望をよそにインフレ圧力に乏しい状況にあります。

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好景気でも、すぐにインフレにつながるとは限らない

 人手不足なのになぜ賃金が上がらないのか? 2017年はこの「謎」を解明すべく多くの議論がありました。

 (1)制度面で価格にキャップが設定されている医療・介護分野の存在感が(経済全般で)高まっていること、(2)労働者が雇用の安定を重視する傾向が強まり、業績拡大時においても、会社側に強気な賃上げを求めなくなったこと、(3)人手不足解消を優先課題とする企業は(新規の)人員確保に人件費を振り分けるため、既存労働者への還元が消極的になっている、などといった景気循環と関係の薄い要因が数多く指摘されました。また物価面では(4)携帯電話料金の値下げ、(5)消費者物価統計の家賃や公共料金が景気変動に関係なく粘着的な動きをしていること、などの特殊要因が多く指摘されました。 確かに上記要因がインフレ抑制的に作用している可能性はあります。

 ただし景気とインフレの関係はリニアではありません。実際、日本の失業率とインフレの関係は失業率3%近辺を閾値(いきち)として、それ以下の水準では賃金・物価が加速度的に上昇するという傾向が観察されています。こうした関係が最後に観察されたのは1990年代前半まで遡ることから、その後の構造変化などを経て現在もこの関係が生きているかは判然としません。しかしながら、失業率が2017年後半に3%を割ってからのタイムラグを考慮すれば、現段階でインフレ率が高まらないことを不可解な事象として、ことさら大きく取り扱う必要がないようにも感じられます。