北朝鮮と米国の緊張関係が高まっていますが、このところ北朝鮮による電磁パルス(EMP)攻撃に関する話題を耳にする機会が多くなりました。一部の専門家はEMPが使われた場合、極めて深刻な被害が発生すると警告していますが、EMPとはどのような兵器なのでしょうか。その影響はどの程度になるのでしょうか。

(ロイター・アフロ)

 北朝鮮は昨年9月、EMP攻撃を加えることができる核弾頭を開発したと発表しました。小野寺五典防衛相が「唐突感がある」と指摘するなど、本当に開発に成功したのかについて懐疑的な見方もありますが、政府ではとりあえず対策を検討しているようです。

 EMP攻撃とは核爆発に伴って発生する電磁波を、通信機器をはじめとする各種インフラの破壊に用いるというものです。核爆発が起こると、大量のガンマ線(あるいはX線)が発生しますが、ガンマ線が物体に当たると、そこから電子が飛び出すという現象が見られます。エネルギーが小さい場合には光電効果が顕著で、エネルギーが高いとコンプトン効果が顕著となります。光電効果とコンプトン効果については高校で物理を履修した人ならよく覚えているでしょう。

 エネルギーの高いガンマ線が空気中の分子と衝突すると、高エネルギーの電子が飛び出し、これが強力な電磁ノイズを発生させます。

 どの程度のノイズが出るのかについてははっきりとした情報がありませんが、地表付近で最大、数十kV/mの電界強度になるともいわれています。これが電子機器を麻痺させ、社会に大きな被害をもたらすという仕組みです。

 電子機器の工学的なノイズ耐性についてはデシベル単位で評価されることがほとんどですから、仮に電界強度を50kV/mと仮定すると、デシベル単位での電界強度は200デシベルを超えます。一般的な電子機器は100デシベル以上のノイズが加わると誤作動を起こす可能性が極めて高くなりますから、この兵器が実際に使用された場合には、広範囲の電子機器が使用不能になる可能性は高いでしょう。

 ただ自動車の電子部品のように極めて高いノイズにも耐性を持つよう設計されたものもありますから、すべての機器がダメになるとは限りません。また電界強度は距離に反比例(それにともなう電力は距離の2乗に反比例)しますから、爆発地点からの距離が離れるにつれて、影響は弱まります。

 本当に開発できたかどうかも不確実ですから、むやみに恐れる必要はありませんが、警戒は必要でしょう。近年は電子機器の普及で身の回りにはたくさんのノイズがあり、機器が誤作動するリスクが高まっています。電子機器のノイズ耐性を高めることは、それ自体が日常生活の安全性を向上させることにつながります。ノイズに強い機器を増やせば、結果的にEMPによる影響も軽減できるわけです。

(The Capital Tribune Japan)