写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ

 2020年の東京五輪が近づいていることもあり、「五輪に向けて景気は加速する」といった期待の声や、「五輪後の日本経済は大丈夫か」といった不安の声をよく聞きます。かつて高度経済成長期に開催された東京五輪が、その準備段階において国家インフラの整備を大規模に進めたことで相当な需要が創出されたことから、現在の日本でも五輪の経済効果に対する期待が大きいようです。

 そこで本稿では、(1)訪日外国人による消費、(2)建設・都市開発関連の投資、に大別して五輪の経済効果を考えてみたいと思います。

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「訪日外国人による消費」は“正の遺産”として残る可能性

 ここで(1)の訪日外国人による消費については、五輪開催期間中に観戦目的で来日した訪日客であれば、直ちに五輪効果として識別可能である一方、その前後に来日した人々は五輪との直接的な関連が不明確です。従って、五輪の経済効果を議論するにあたって、どこまでを五輪効果と認識するかによって相当の幅が生じることを理解しておく必要がありますが、過去の開催国のパターンから判断すると、五輪開催後も観光客が増加する傾向が観察されています。これを広義の五輪効果とするならば、ギリシャ(2004)、中国(2008)、英国(2012)のように開催後もインバウンド需要が盛り上がることが期待されます。五輪開催に絡んで実施したインバウンド施策が“正の遺産”として残ることが期待されます。

もうすぐピークを迎える「建設関連投資」

 他方、(2)の建設関連投資は、過去の開催国のデータ蓄積も進んでいることから直接的な経済効果が(さほど恣意的にならず)定量的に計測できます。建設関連投資には、競技場・選手村のほか、民間のホテル建設、ターミナル駅周辺の商業施設の再開発、交通網の整備などが含まれ、それらは2020年に間に合うよう着工計画がたてられます。従って、五輪の“直接的”な経済効果という観点からは、こちらをメインにして考えるべきでしょう。

 ここで最も重要な視点でありながら盲点となっているのは、建設需要が最も盛り上がる時期です。日本銀行が各種先行研究を参考に試算した結果によると、建設需要が最も強く発現するのは、開催の2年前であることが示されています(※開催数日前まで竣工が遅れたブラジル大会は例外)。つまり、2018年が建設投資のピークということですから、私達は今現在、五輪景気のピーク付近にいるということになります。事実、日本銀行は、2018年1月25日発表の「経済・物価の展望」において、2019年度の経済成長率が減速する理由について、消費増税のほかに「オリンピック関連投資の一巡による設備投資の減速」を挙げています。このような予測が正しければ、多くの人が考えている姿とは異なり、五輪の直接的な経済効果は開催前にピークアウトすることになります。