人口減少に入った日本。国や地方自治体は少子化による人口減少を食い止めるために、目標とする出生率を算出し、長期計画を立てています。

 福井県立大地域経済研究所特命講師、丸山洋平氏が、人口移動や家族の姿の変化から、日本の人口を捉えるための視点について書く本連載、今回はどのように出生率を見ていけばよいか、執筆します。

人口置換水準はどの市区町村でも同じ値と考えていいのか?

[イメージ]愛らしい寝顔の赤ちゃん。少子化を考えるときに避けて通ることの出来ない出生率を私たちはどのようにみるべきなのだろうか(写真:アフロ)

 2.07。この数字を見たことがあるでしょうか。最近の日本の人口置換水準です。

 人口置換水準とは、子世代の人口が自分を産んだ親の年齢にまで成長したとき、その親世代の人口と同じ規模になるという人口再生産の状況を達成するのに必要な出生率の水準であり、少子化を解消するために必要な出生率の水準です。ここでいう出生率とは合計特殊出生率のことで、1人の女性が一生に産む子どもの数ですので、今の日本では女性1人当たり一生に2.07人の子どもを産む状況が継続されれば、少子化が解消されるということになります。

 2015年の日本の合計特殊出生率は1.45でした。人口置換水準は2.07ですので、その比は1.45÷2.07≒0.70となります。これは現在の出生率が継続すると子世代の人口は親世代の人口の70%に縮小することを意味しますし、さらにその状況が続けば孫世代は70%の二乗で49%となり、祖父母世代に対して孫世代の人口が半分になるということを意味します。親世代よりも子世代の人口規模が小さくなる状況が継続し、人口の再生産ができず、総人口が減少していくのが少子化です。

 日本全体の長期的な人口減少に歯止めをかけるためには少子化を解消しなければならない。そのためには出生率を人口置換水準にまで上昇させなければならないということで、日本政府も出生率上昇を意識した方針を取っています。

 内閣府の「選択する未来」委員会の報告書には、出生率が2030年までに人口置換水準まで上昇すれば2090年代半ばに人口減少が止まり、総人口が1億人程度を維持できるという将来人口推計が掲載されています。また、地方創生に係る総合戦略策定の際、各地方自治体に提示された国の長期ビジョンでは将来の出生率として、2030年に国民希望出生率1.80、2040年に人口置換水準2.07まで上昇するという仮定が置かれています。

 2015年度は地方創生の流れの中、各地方自治体は地方版総合戦略と地方人口ビジョンを策定しました。そこには人口置換水準にまで出生率を上昇させることを目標にしているものもあります。それらを見てみますと、どうやら人口置換水準はどの都道府県、市区町村であっても2.07と考えられているようです。

 日本全体の人口置換水準が2.07であることは間違いありません。ですが、出生率には地域的差異があり、寿命も長い地域と短い地域があります。それから地方圏は転出超過で東京圏は転入超過であるというような人口移動の地域差があることも我々は知っています。それなのに人口が再生産されるのに必要な出生率の水準は、どの地域でも日本全体と同じ2.07と考えてよいのでしょうか。

 地域によって人口再生産に必要な出生率の水準は異なるのかどうか、異なるとしたらそれはどの程度なのか。今回はこれについて考えてみたいと思います。

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