1991年に生まれてほどなく脊髄性筋萎縮症と診断され、以来、寝たきりの生活を送っている佐藤仙務さん。高校卒業後、「雇ってもらえなければ会社を起こそう」とホームページや名刺の作成を請け負う会社を起業しました。現在、株式会社「仙拓」の代表取締役社長を務めています。会社を経営する一方で、「障がい者は雇われるだけではなく、起業できる社会づくりが必要だ」と訴え続けています。「寝たきり社長」こと佐藤さんの「働き方改革」とはどんな考え方なのでしょうか? 佐藤さん自身が連載で思いを語ります。


上場目指す“寝たきり社長”24歳、「体が動かなければ、頭を働かす」

寝たきり社長こと佐藤仙務さん

 誰もが活躍できる社会を目指そうと掲げられた「一億総活躍社会」。これは、2015年10月に発足した第3次安倍晋三改造内閣の目玉プランである。簡単に言うと、“若者も高齢者も、女性も男性も、障がいや難病のある方も、一度失敗を経験した人も、みんなが包摂され活躍できる社会を目指す”というものらしい。

 筆者は重度の身体障がい者だ。10万人に1人が発症するという難病「脊髄性筋萎縮症(SMA)」を患っている。この病気の症状は筋萎縮性側索硬化症(ALS)と非常によく似ている。脳から筋肉への信号伝達がうまく作動せず、全身の筋肉がどんどん衰えていく。染色体異常から起こる指定難病で、その上、比較的稀少性も高いので、なかなか研究も進まず、現在の医療では治療法が確立されていない。

 筆者の場合は、全身で動かせるのは両手の親指数センチだけである。この原稿は、このわずかに動く指だけで書いている。あと、会話もできるが、それ以外、自分の身体を動かすことは全くできない。要は、常時「寝たきり」の状態である。食事もトイレも入浴も、日常生活全てにおいて誰かのサポートが必要で、たとえ、自分の手に蚊がとまっていても追い払うことさえできない。

 だからそんな筆者が、初めてテレビのニュースで「一億総活躍社会」という言葉を聞いたときは、正直こんな風に疑問に思ってしまった。

 「安倍総理、正直なところ、僕みたいな寝たきりも総活躍社会に参加できるんですか」と。

 障害者雇用促進法も改正が進み、企業は障がい者雇用の重要性に目を背けてはいられなくなった。しかし、企業は障がい者雇用に乗り気かといえば決してそうじゃないし、時代が進んでも、障がい者のマイナスイメージはなかなか変わらない。

 それを象徴するような事件が2016年に起こった。神奈川県にある相模原障がい者施設の殺傷事件だ。あの事件の加害者は、「重度の障がい者は生きている価値がない」と主張し、障がいが重度な人を選んで19人を殺し、27人に傷害を負わせた。

 筆者も重度障がい者だ。自分一人では何もできないし、身体的なハンディキャップも大きい。現実問題、重度障がい者や難病患者のほとんどが社会進出はおろか、いまだ雇ってもらうことさえできない世の中だ。だが、自分に生きる価値がないなんて考えたことは一度もない。

 だから、筆者は2011年にあることを決断した。

「そうだ、雇ってもらえなければ会社を起こそう」。

 そして、寝たきりでも社長になって、自分で障がい者の社会進出のあり方を変えようと。

 筆者がこれから話すことは、人によっては「世の中にはもっと大変な人がいるんだから……」という、なんとも耳が痛い話に聞こえるかもしれない。

 しかし、これから筆者が問いかけようとしていることは、そういうことじゃない。障がいがあるとかないとかにかかわらず、人間にはそれぞれの役割や持ち場があるということだ。そして、私たちにとって「働く」ということが何なのか、障がい者の活躍はどうあるべきなのか。「寝たきり社長の働き方改革」をみなさんと一緒に考えていきたい。

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