米トランプ大統領やムニューシン財務長官の発言でドル円相場が乱高下しています。米国はドル高を望んでいるのでしょうか。それともドル安を望んでいるのでしょうか。

ムニューシン財務長官(写真:ロイター/アフロ)

 スイスで開催された世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)に出席するためダボスに到着したムニューシン財務長官は1月24日「貿易のため弱いドルは良いことだ」と発言。これを受けて為替相場では一気にドル安が進行。しばらく1ドル=110円台で推移していたドル円相場は一時、109円を割り込む水準まで円高が進みました。ところがトランプ大統領は翌25日、「ドルは強くなるだろう。私は強いドルがみたい」と発言。今度はドル高が進み、109円台半ばまでドルが回復しました。

 米政府首脳のバラバラな発言に為替市場は動揺していますが、これもトランプ政権ならではといってよいでしょう。今回の発言について市場関係者の多くは、ムニューシン氏の忖度と見ています。ムニューシン氏は以前から緩やかなドル高が国益になると発言しており、安定的にドル高が進むことを望んでいます。これはマクロ経済的に見ても米国の国益にかなっています。米国は世界中から資金を調達し、こうして集めたお金で日本や中国、欧州などから大量の製品を購入しており、これが世界経済を支えています。米国に資金が順調に集まるためには、ドル高であることが重要となるわけです。

 しかし米国の製造業だけはそうではありません。日本と同様、製造業は自国の通貨が安い方が、見かけ上の売上高が増えますからドル安を望みます。米国の製造業で働く労働者層はトランプ政権の支持母体のひとつですから、トランプ氏は彼等を無視することはできません。

 ダボス会議では米国の自国中心主義に批判が出ることは確実と思われていたため、ムニューシン氏はトランプ氏の意向を忖度し、米国の製造業に配慮する発言を行ったと考えられます。しかし予想外にドル安が進んだことで動揺が広がり、トランプ氏が火消しをする形になったと考えるのが自然でしょう。

 日銀が量的緩和策の見直しに動くとの予想もあり、近いタームでは円高に振れやすい傾向がありますが、長期的には米国は緩やかなドル高を望んでいるはずであり、日本にとってもその方がメリットが大きいでしょう。為替の動きについて考える際には、短期と長期をよく峻別する必要がありそうです。

(The Capital Tribune Japan)

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