私たちが普段の生活の中で当たり前のように利用している住民サービス。全国どの自治体に引っ越しても、概ね同様の住民サービスを受けられることもあり、私たちが自治体ごとの住民サービスやそれを支える制度について考えることは、あまりないのではないでしょうか。

しかし、国全体の人口が減少し、財政面での自治体間の格差も鮮明になりつつある現代において、現在の地方自治をそのまま維持するのは難しくなってきています。地方自治体の役割やガバナンスの仕組みなど、地方自治のあり方を変えていく必要はないのか、今こそあらためて考える機会ではないでしょうか。

[写真]地方自治のあるべき姿について意見を戦わせた第4回「憲法について議論しよう!」(撮影:Yahoo! JAPAN公式カメラ隊・杉山雄太)

今回で4回目となる憲法討論イベント「憲法について議論しよう!」では、「あるべき地方自治の姿とは?」をテーマに、現職市長として市政改革に取り組む兵庫県明石市の泉房穂(ふさほ)市長、地方自治や地方財政に詳しい慶應義塾大学法学部の大屋雄裕教授と大阪大学大学院高等司法研究科の片桐直人准教授、そしてヤフー株式会社の別所直哉執行役員が、地方の抱える課題を議論しました。

地方自治体は、人口減少、住民ニーズの多様化などの時代の変化の中で、あらためて役割や存在意義の見直しが求められています。地方自治において、だれが意思決定し、責任を担うのか。一方で、一定水準の住民サービスをどのように全国規模で安定的に提供するのか。討論の中では、大胆な提案も飛び出しました。

時代の変化に応じた地方自治を

[写真]「都道府県が担うべき役割は変化してきた」と指摘をした明石市の泉市長(撮影:Yahoo! JAPAN公式カメラ隊・杉山雄太)

「そろそろ日本の社会システムを見直すべき。人口が減少し、財源も厳しくなる時代に、市民ニーズの多様化にふさわしいシステムづくりの議論を憲法論議の中でも始めるべき」

こう語る泉市長は、2011年から明石市長を務めています。泉市長は、市の人員や組織を整理して捻出した予算を「子ども」を軸にした政策に集中させ、子育てしやすい街づくりを進めてきたことで、市の人口が4年連続で増加したと語ります。

泉市長はこのような経験を踏まえ、地方自治のあり方をめぐって3つの提案をしました。

(1)現在の国・都道府県・市区町村の「3層構造」から、国と基礎自治体の「2層構造」へ
(2)地方統治機構(首長と地方議会の二元代表制)のあり方の見直し
(3)地方自治体に権限と責任を(特に自主課税権)

泉市長は(1)の「2層構造」の提案について、具体的には「全国一律の行政サービス(例;上下水道、生活保護)を提供する『国』と、住民に身近な存在として地域ごとの個別ニーズに応じた住民サービスを提供する『基礎自治体』の役割があればよい」といいます。

このように主張する根拠として、「時代の変化」を強調します。「国-都道府県-市区町村」の3層構造は、明治維新後、近代国家を作り上げていく過程では有効だったと評価します。幕藩体制が終わった直後、市町村などの自治体も存在しない地方に対して、全国一律でインフラなどのハード面を整備していくため「“中間管理職”的な広域自治体である都道府県をつくって市町村を束ね、迅速に国土を整備する必要があった」(泉市長)からです。

しかし、現在は、全国一律のハード整備は完了しているといえます。また、人口減少の時代に突入し、財政収入の減少も見込まれる中で、地方自治は、多様化する住民ニーズに対し、何を選択し、あきらめるべきか、選択と集中の判断が求められる局面に入っています。

泉市長は「そのため、基本的な整理として、自治体は多様化するニーズに応じた住民サービスに責任を持つ役割の基礎自治体であるべき。政令指定都市や中核的な市は、基礎自治体として権限と責任を持ち、住民と向き合う。一方、人口や財政基盤が十分ではなく、基礎自治体としての役割を果たせない小規模の市町村は、中間管理職的な役割を終えた都道府県が、それらに代わって基礎自治体としての役割を持ち、住民に寄り添った仕事を担っていくべきではないか」と述べました。