37年前の雪辱を果たしてくれた愛弟子、比嘉大吾(中)のKO勝利に具志堅会長(左)も涙した

ボクシングのWBC世界フライ級タイトル戦が4日、沖縄那覇の県立武道館で行われ、王者の比嘉大吾(22、白井・具志堅)が同級9位で元2階級王者のモイセス・フェンテス(30、メキシコ)を1回2分32秒KOで破ってV2に成功した。沖縄で世界戦が行われたのは、WBA世界ライトフライ級王者だった具志堅用高会長が14度目の防衛に失敗した試合以来、37年ぶりで、沖縄での世界戦勝利は史上初。またこれで15試合連続KO勝利となり元WBC世界スーパーライト級王者、浜田剛史(帝拳ジム代表)、元東洋太平洋、日本ウェルター級王者、牛若丸あきべぇ(当時協栄)の日本最多記録に並んだ。

 ヒュー、ヒューと指笛が鳴り響く。
 武道館は3000人の沖縄のファンで埋まり異様な熱気に包まれた。後楽園にもない熱量。比嘉がリングに登場すると「ぶち殺せ!」の物騒な声援が飛んだ。
「沖縄だなあ」
 比嘉は、その大声援に帰郷を実感したという。
 背丈で上回る元2階級制覇の挑戦者は「足を止めて強いパンチの応酬をしようと思った」と1ラウンドから果敢に前へ出てきた。「あれ?と思った。4ラウンドまでに勝負にきたな」と具志堅会長もフェンテスの“いちかばちか”の心持ちを見破っていた。比嘉は打ち終わりに右のフックを浴びる。

「パンチを一発もらってからは見えていた。どこが空いているとか」

 会場がシーンとするのが嫌いな比嘉は、常に仕掛けていなければ気がすまない性質だが、無理せず足を使い引いた。弱点を見つけカウンターに切り替えるのに時間はかからなかった。ビュッと放った左ジャブがカウンターになって挑戦者がよろよろと下がる。

「バランスを崩したと思うが、効いたように見せるためには、一気に叩き込んだほうがレフェリージャッジへの印象がよくなる」

 比嘉の右のストレートがこめかみに。フェンテスは体を折り、ひざが揺れた。

「あの右ストレートで勝負が決まった。相手は見えなかったと思う。リズムが狂ったね。右ストレートが当たると言っていたんだ。フェンテスが大吾のここ2試合の試合を見て研究してくるなら、左とサイド攻撃に警戒してくるだろうから右ストレートは当たると」

 具志堅会長は、そうアドバイスしていたという。

 比嘉も「あれがダメージになっていた」と、近づくフィニッシュを予感していた。

 とどめは控え室で最後まで野木トレーナーと反復した左のボディ、左アッパーのダブルから右のボディストレートという必殺のコンビネーション。アッパーであごを上げ、がらあきになったみぞおちに右ストレートを突き刺すと、フェンテスは、両手をキャンバスについて四つんばいになり苦しみの余りマウスピースを吐き出した。10カウントぎりぎりになって立ち上がったが、ファイティングポーズも取っていなかったため、レフェリーはカウントを続けた。
 勝利を見届けてからコーナーにかけあがった比嘉だが、過去に一度、早合点をした失敗があるだけに、チラっと赤コーナーの陣営の様子を確認してからガッツポーズを取った。
 152秒の衝撃KO勝利。
「涙が出ました。嬉しくて。1ラウンドで勝てるとも思っていなかった」
 場内も興奮の坩堝である。
「みんなオリオンビールを飲んで試合を覚えていないのでは」と比嘉も言う。