今季11戦ゼロ勝のまま平昌五輪を迎える高梨沙羅は奇跡を起こせるのか?(写真・アフロスポーツ)

 いまだ自分のジャンプがわからない高梨沙羅(21、クラレ)である。スキージャンプにおいて新しい競技種目の女子ジャンプとはいえW杯で53勝という偉業を成し遂げた高梨のかつての勢いは何処へいったのだろう。男女を通じて最多勝利となる54勝目を挙げることができず、今季ゼロ勝のまま、平昌五輪を迎えることになった。調子が良いのか悪いのかさえも把握できない悶々としたときが続いていた。

 今季、台頭してきた大型ジャンパーのマーレン・ルンビ(23、ノルウェー)は軽く100mオーバーのビッグフライトを見せつけて圧勝を重ねている。かつては一世を風靡した高梨のスピードジャンプ(空中速度が速い)は、体型が似ている今季2勝のカタリナ・アルトハウス(21、ドイツ)にとって代わられ、しかも、名門オーストリアチームが高梨対策にと、ピックアップした小柄なキャラ・ホルツルにさえ1月の蔵王W杯で敗れてしまっている。

「助走路で体への落とし込みがしっくりきません。そこに意識が取られて、踏み切りのタイミングが合わなくなっています」
口を開けば反省点ばかり、謙虚な分析であるのはわかるが、そういう言葉は、もう聞き飽きたとばかりに、ため息をつく新聞記者も出てきた。

 勝てない理由は、どこにあったのか。

 技術的にみるとアプローチの形状が上向きになっているR(助走路の後半部分)の“跳ね返り”を充分に足裏で感じて飛び出すことができていない。簡単に言えば、それをバネにして飛び出していくことができず、どうにも動きが連動せずに、ちぐはぐな状況に陥っている。助走路の雪面から感じる跳ね返りの圧力を的確につかみ取りながら、速やかにアプローチ姿勢を組んで、飛び出すのが理想だが、その課題が克服できていないのだ。悩みはそこ。正確無比だったはずのアプローチ姿勢が作れないのである。

「札幌と蔵王のW杯シリーズで、そのミスに気がつき、それがわかっただけでも良いと思います。夏の練習が間違いだったかもしれません。それをいまから取り戻したいです」

 そのボタンの掛け違いは、夏場のトレーニングにまでさかのぼるという。
 夏に北海道士別市朝日町のサマージャンプ開幕試合の前後から指導についたオーストリア人コーチによる技術変革は、ソフトに静かに進んでいくジャンプで、かつての弾丸のようなスピードあふれる空中シーンはみられなくなっていたが、それらの取り組みが、ある意味、裏目に出てしまったのか。

 さらに今シーズンからは、日本女子チームのサービスマン(ワックスマン)の変更があり、スキーの滑りが、しっくりとこないシーンがしばしば見られた。その影響もあってアプローチの感覚が狂い、自分の絶好のポジションに乗りにくかったのかもしれない。スキーの滑りが変われば、アプローチが改善する可能性は残されているが、踏み切りのタイミングが合わない違和感に身体の落とし込み動作の意識の違い。それらを、いまから修正して間に合うのか、との不安が残る。

 平昌五輪で高梨は活路を見出せるのだろうか。