厚生労働省は事業者に受動喫煙対策を義務付ける健康増進法改正案(いわゆる受動喫煙防止法)の素案を公表しました。当初案として比較すると大幅に内容が後退しており、もしこの法案が通った場合、日本の受動喫煙対策は事実上、骨抜きになります。

塩崎恭久・厚労相に聞く(全文1)受動喫煙対策 自民党に譲らなかった理由

(アフロ)

 政府は、東京オリンピックの開催を控え、公共の場所を原則禁煙とした本格的な受動喫煙対策の導入を検討してきました。国際オリンピック委員会や世界保健機関(WHO)は開催国に対して「たばこのない五輪」を求めていますが、日本の対策は先進国で最低レベルという状況です。また司法判断においても受動喫煙は吸わない人に対して危害を加える行為であるとの見解が示されるようになってきたことも政府の対策を後押ししました。

 ところが、公共の場所を原則禁煙とする受動喫煙防止法案の概要が示されると、自民党内から反対の声が続出。与党内で意見の取りまとめができず、法案が提出できないという状況が続いてきました。

 厚生労働省は1月30日、ようやく法案の骨子を発表しましたが、これまでより大幅に後退した内容になっています。法案における最大の争点は、小規模な飲食店の扱いですが、「喫煙」「分煙」と表示すれば喫煙が可能となりました。

 これまで受動喫煙防止法は原則禁煙を前提に議論が進められていましたが、この大前提が崩れてしまったわけです。しかも、こうした例外規定を認める飲食店の店舗面積は、当初30平方メートル以下でしたが、150平方メートル以下に拡大される見込みです。都内の飲食店の9割は150平方メートル以下ですから、ほとんどの店で喫煙が可能となります。

 また学校や医療施設についても、当初は敷地内禁煙でしたが、素案では屋外に喫煙場所を設置することが可能となりました。東京オリンピックの開催を控え、法案成立を優先した形ですが、仮に法案が成立しても、世界保健機関の基準では、最低ランクから1ランクアップするに過ぎません。

 受動喫煙対策は、欧米各国のみならず中国、ロシアでも進んでおり、平昌オリンピックを控える韓国でも屋内禁煙の法律がすでに整備されています。つまり日本だけが遅れている状況と言ってよいでしょう。素案通りに法律が施行された場合、東京オリンピックは煙の中での開催となりそうです。

(The Capital Tribune Japan)