写真:つのだよしお/アフロ

 2月2日の米国株急落に端を発する世界的な金融市場の混乱のなかで、為替市場ではJPYが独歩高となり、USD/JPYは6日の日本時間午前に108円半ばまで下落しました(2日の米国時間早朝は110円前半で推移)。

 このように主要通貨のなかでJPYに買いが集中した理由として考えられるのは、EURが調達通貨としての魅力を失いつつあることが挙げられます。調達通貨とは、投資目的でおカネを借り入れる際に用いられる通貨であり、通常、低金利通貨がその対象になります。投資家は低金利通貨を売っておカネを”調達”し、それを高金利通貨などへと投資します。つまり、投資家のリスクテイク志向が旺盛な時ほどJPY等の調達通貨が売られ、その反対の時に買われるという構図です(買われる時は逃避通貨と呼ばれます)。EURは、欧州中央銀行(ECB)による資産購入の停止とその後の利上げが意識されていますから、金利に先高感が生じており、最近は調達通貨としての性格が弱くなっている可能性が濃厚です。

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なぜ日本円だけが買われるの?

 それゆえ、リスク志向が強まってもEUR売りが進みにくくなっており、反対にここ数日のようなリスク回避姿勢が強まる局面において、逃避通貨としての需要が膨らみにくいのでしょう。2015-17年はECBの積極的な金融緩和(マイナス金利&量的緩和)の結果としてEURがJPYと同様の性格を帯びたことから、調達通貨の需要がEURとJPYに分散しました。

 それゆえ、JPYが独歩安(高)になる場面が少なかったのですが、足元ではJPYが持つ調達通貨の性格が際立ち始めていることから、このようにリスク回避姿勢が強まったときに独歩高となりやすいと考えられます。リスク選好下で調達通貨になるということは、リスク回避時に逃避通貨になることを意味します。今そうした性格が最も強いのは、金融緩和の出口が最も遠いJPYです。従ってUSD/JPYは株式市場の混乱が収束するまで下方リスクが高いと判断されます。USD/JPYは105-107程度までの下落を想定しておくべきでしょう。

※なお5日の米国株下落は変化幅でみれば「過去最大の下落」ですが、より重要な変化率でみれば1980年以降で26番目の大きさです。

USD/JPY

(第一生命経済研究所・主任エコノミスト 藤代宏一)
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