「鳥谷・二塁」の緊急オプションの意味(写真・黒田文夫)

阪神の沖縄・宜野座キャンプで6日、鳥谷敬(36)の二塁コンバートがテストされた。2年目の大山悠輔(23)が先に二塁コンバートに取り組んでいるが、まったく未知数のポジションであり、なんかしらの不測の事態に備えて準備されたもの。就任3年目を迎える金本監督の危機管理が細心になってきた。

 この日、午前中のメイングラウンドで、投内連携、バントシフトの確認練習が行われたが、二塁には、大山、植田、そして鳥谷が入った。鳥谷は、投手のバント処理に際してのベースカバーや併殺プレーなどに軽快な動きを見せ、シートノックでも、そのまま続けて二塁を守った。

 金本監督が、その意図を説明した。

「備えとして。基本的にはサードですが、何が起きるかわかりませんから。去年もやったしWBCでもしっかりと守っていたしね」
 
 何に備えるのか、の想像は容易だ。

 一塁に評判の新外国人、ロサリオが入ったため、大山の打力を生かすべく、二塁に取り組ませているが、なにぶん、慣れないポジションであり、ほぼ捕球して投げるだけの三塁とは違って仕事量が多い。
 ボールに触れる機会が増えるほどミスが生まれる可能性も高まり、それらに神経を使うことで、今キャンプで、目を見張るほどの成長を見せている大山のバッティングに悪影響が出る危険性もある。

 打撃優先で考えるならば、大山には不安のない三塁を守らせるのがベストだ。しかし、そうなると、今度は昨年、三塁のポジションで復活を果たし、ゴールデングラブ賞まで獲得した鳥谷が浮いてしまうことになる。 だが、大山と交換で二塁を守れば鳥谷も生かせる。

 鳥谷は、昨年もオープン戦では、二塁を守り、2012年のオールスター、2013年のWBCでは、巨人の坂本と二遊間を形成して二塁を守るなどの経験はあり、二塁守備についてはなんら問題がない。

 金本監督も「今のバッティングを見ていると大山を使いたくなる。いろんなケースを考えて備えておきたい」と、不測の事態に備えてのチームオプションのひとつであることを明らかにした。
 この日は、三塁には大山でなく糸原が入っていたが、「鳥谷・二塁」なら、あらゆるオプションが増える。

 それならば最初から「大山・三塁」「鳥谷・二塁」でポジションを固定するという考え方もある。だが、昨季、鳥谷は、キャンプでの北條とのショート争いに敗れたとされ三塁へ回った。「言われたところでやるだけ」。そう鳥谷は語るが、たった1年でまたベテランのポジションを動かすことへの“配慮”もあるのだろう。

 だが、この時期に緊急オプションを試したのはチームのマネジメントとして大きな進歩である。コーチ経験のないままユニホームを着た金本監督の、この2年は準備不足のケースが目につくことがあったが、3年目となる今春は、「キャンプで、あらゆるケースを想定しておく」という危機管理を徹底した。選手に対して「こういう起用もあるよ」と、準備の必要性を意識させておくだけで意義がある。

 備えあれば憂いなしーーー。あらゆる緊急オプションを用意しておけば、故障者が出た場合や、打線が大不振に陥った場合などにあわてる心配もない。

 かつて吉田義男氏や、野村克也氏の阪神監督時代には、「1年に一度あるか、ないかのプレー」をキャンプで必ずシミュレーションしていたものである。

 ただ、まだショートのポジション争いの行方も未定。セカンドには2軍スタートとなった上本もいる。FAで大和が、横浜DeNAへ移籍してしまったことで、センターラインの穴を埋めるピースがなくなっている状況だけに阪神の抱える問題は解消されていない。緊急オプションに目処がついたことだけは朗報だろうが……。

 (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)

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