写真:ロイター/アフロ

 今回の米国株急落を引き起こしたのは米金利上昇です。これまで米連邦準備制度(FED)の長期にわたる金融緩和が株式を過度にサポートしていた感は否めず、それゆえ株式市場の金利上昇に対する脆弱性が露呈したものと考えられます。

【連載】マーケットの動きがわかる 経済指標深読み

バブルか否かの議論 バブル手前のフロスの状況

米国 名目GDP・10年金利

 米国株は予想PERが18倍を超え、シラーPER(解説は図中)も長期平均を大幅に上回って推移していたことから、以前よりバブルか否かの議論が盛んに繰り広げられていましたが、やはりバブルの手前、少なくともフロスの状況にあったのでしょう(frothとは小さな泡)。

 米国経済は景気後退後の果敢な金融緩和の結果として「名目成長率>名目長期金利」の関係が長期にわたって成立してきました。添付の図をみれば明らかですが、この関係は資産価格を過度に支援してしまうことが過去の経験から判明しており、現在のようにそれが長期化しているのは資産バブルの発生確率が高まっている(あるいはすでにその状況にある)ことを意味しています。2000年代半ばの住宅バブルでは、名目成長率対比で低過ぎる金利が住宅セクターの過剰投資を誘発しました。2000年頃のITバブルも低金利が株式リスクプレミアムを過度に抑制したことが遠因と考えられます。株式リスクプレミアムは他の条件が一定の場合、金利が下がると低下し、それは株式投資の魅力を高めます。 

 こうして考えると、名目GDP成長率が年率4%、名目長期金利が2%台半ばという現在の関係が、金利上昇によって崩されるならば、株価バリュエーションは大幅に切り下がると考えるのが自然です。過去数年、FEDの金融緩和によって長期金利が低位安定する下で「株式配当利回り>10年金利」の関係に着目し、株式を社債と見做して高PER(低益回り、つまり割高)を許容してきた投資家からすれば、金利上昇は直ちに株式の魅力後退を意味します。資産価格の下落は、家計に逆資産効果をもたらすほか、企業の設備投資意欲を減退させるなど、複数の経路を通じて実体経済に伝播し、景気後退の原因となります。現在の株式市場が安定を取り戻せば、FEDは3月に追加利上げを実施し、その後も段階的に利上げを継続するとみられますが、そうした金融引き締めが資産価格下落および景気後退の発生確率を高めることは常に念頭に置くべきでしょう。

(第一生命経済研究所・主任エコノミスト 藤代宏一)
※本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。 

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