[写真]本格的な講座で勉強した後、日本酒を楽しむ参加者

 東京・銀座にある長野県のアンテナショップ「銀座NAGANO」(銀座5丁目)で、日本酒講座が人気です。長野県の地酒を通して酒造りの工程を順を追って1年間学び、その間に信州の酒造店で酒造の体験もする中身の濃い講座。幅広い年齢層の参加者が毎回の講義と日本酒を楽しみながら、日本酒の文化を語り合う至福の時を過ごしています。

1年かけて酒造りの工程を学ぶ

 講座は24人定員。3年前から始まり、信州・地酒アドバイザー(長野県酒造組合公認)の玉岡あずみさんがイベントプロデューサーとして指導し、精米、洗米、蒸し、麹(こうじ)、酵母、醪(もろみ)、酒と酒粕(かす)に分けるために搾る上槽(じょうそう)と沈殿物のおりを取り除く滓引き(おりびき)、最後の貯蔵管理までの工程を10回、1年かけて学びます。

[写真]多岐にわたる日本酒の製造工程を説明(三木さん)

 昨年7月から講座が始まり、8回目を迎えた1月24日は「上槽・滓引き・瓶詰め」がテーマ。この日は、食品工学を学ぶうちに日本酒に関心を持ち最初から講座に参加してきた地方公務員の三木照(ひかる)さんが「上槽には(1)布の酒袋にもろみを詰めて槽(ふね)に敷き詰めて搾る、(2)自動圧搾機の使用、(3)袋吊(つ)り――の3種類の方法がある」「ふねの中でもろみの重さだけで垂れてくる酒を荒走りと言う」などと説明しました。

 また、日本酒は圧力のかけ方で性質の違う酒になるので、目的の酒によって搾り方を選ぶことや、火入れ(加熱)の方法によって味も変わるなど、繊細な日本酒の製造工程を紹介。日本酒の出来上がりまでの複雑多岐な内容に、受講者は真剣に聞き入っていました。

[写真]豊富な知識で講座の要点をまとめる玉岡さん

 この後、玉岡さんが製造工程をおさらいし、「火入れでは、空気に触れて酒が酸化しないように最近は窒素で酒と空気を触れさせない方法を取っているところもあります」などと説明。勉強を終えた参加者は、料理を楽しみながら信州の地酒を楽しんでいました。

 参加者のうち、松本市出身で東京在住の男性2人(いずれも64歳)は「長野県は新潟県に次ぐほど酒造りの蔵元が多いところ。最近は信州のワインが良く知られているが、日本酒造りを衰えさせないためにも県などがもっと後継者の育成に力を注いでほしい」「コンピューター管理の安定した日本酒製造も話題になっているようだが、今年は出来がいいとか悪いとか毎年皆で評価をしながら飲む酒こそ楽しい。信州の小さな蔵元のそんな酒造りを支えていきたい」と話していました。

 また、日本酒に詳しい女性参加者は「信州は女性の杜氏(とうじ)が増えている。彼女たちの活躍が新しい力になるはず」と話していました。

 参加者は若者から中高年まで幅広く、女性が目立ちます。酒造り体験は冬期間に数回行い、体験先の酒造店の環境などに合わせて参加者は毎回数人。玉岡さんは「皆熱心で、酒造体験などを通じて新しい友人関係が生まれることもあります。長野に来てみてよかった、と頻繁に信州を訪れるようになった人もいて、講座は思わぬ副産物も生み出しているようです」と話しています。


■高越良一(たかごし・りょういち) 信濃毎日新聞記者・編集者、長野市民新聞編集者からライター。この間2年地元TVでニュース解説

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