宇野は団体戦で朝の競技時間にも適応して1位の演技を見せた(写真・ロイター/アフロ)

平昌五輪で最大の注目競技であるフィギュアスケートは団体戦から幕を切った。ソチ五輪から採用された種目で、10か国が、男女シングルのショートプログラム、ペア、ダンスの4種目で予選を戦い、上位5か国が決勝へ進み、フリープログラムで争う。個人戦に向けての“前哨戦”の意味合いも込められた団体戦で、宇野昌磨(20、トヨタ自動車)は、出場選手中、ただ一人、100点を突破する103.25点で1位。一方、日本勢のライバルは転倒するミスが相次ぎ、金メダルの最有力候補の一人に挙げられているネーサン・チェン(18、米国)は転倒するなどミスを連発して80.61点で4位だった。

元世界王者のパトリック・チャン(27、カナダ)、ミハイル・コリヤダ(22、OAR)、チェンら10人中5人が転倒する大荒れの1日となったが、なぜ宇野はミスが少なく、チェンらライバルは転倒したのか。

 元全日本2位で福岡で後進の指導を行っている中庭健介氏は「明らかな理由のひとつが見えた」と分析した。

「団体戦の男子SPは転倒する選手が続出して荒れましたね。その原因のひとつには朝の時間帯に行われたという競技スケジュールにあります。どの選手も平昌五輪の競技時間を想定して準備をしてきたでしょうが、肉体にはリズムというものがあり、そう簡単には変えられません。僕も現役時代は、朝の時間帯の練習では4回転の成功率が低かったんです。体が動かず集中力に欠けました。睡眠のリズムもあるんだと思います。五輪の緊張、プレッシャーに加えて、時差の問題などもあり、体が硬くなって動かない、4回転の成功率が低い、という傾向が、宇野選手以外に出たのだと思います」

 “魔の朝時間帯”である。

 フィギュアは、放映権の関係でアメリカのプライムタイムに合わせて行われるため、午前10時に競技が開始される。16日からスタートする男女の個人戦も同じスケジュールだ。グランプリシリーズも含めてフィギュアの競技は、通常夜に行われるため、午前という競技時間は、夜の時間帯の競技に慣れた選手に多大な影響を与えたのは間違いないだろう。

 元世界王者のチャンは冒頭の4回転トウループで転倒。後半のトリプルアクセルでも再び着氷に失敗して81・66点の3位に終わった。4回転の申し子で金メダル候補であるチェンは、4回転トゥループが抜けて、まさかの2回転に終わり、そのミスで失ったリズムとテンポを立て直すことができないままトリプルアクセルでも転倒して80・61点と得点が伸びなかった。

ダークホース的な存在であるコリヤダも、冒頭の4回転ルッツで転倒すると、続く4回転トゥループ+3回転トゥループの連続ジャンプも失敗、ミスの連鎖をとめきれずに74.36点の8位と大惨敗。
 4回転時代は、イコール、4回転のミスをした選手が負けーという減点ゲームである。今回、その4回転時代の罠にはまって宇野の有力ライバルが次々と脱落した。

 米国のタイム誌も「チェンはカリフォルニアで練習時間を早めて準備を進めてきたが、早朝の競技が彼の演技に影響したようだ」と“魔の朝競技時間帯”に苦しんだと分析。チェンの「(カリフォルニアでの)朝7時の練習は、少し厳しかった」という談話を紹介した。

 無理に朝の時間帯に適応しようとした準備も足を引っ張ったようだ。

 だが、団体戦で4位に終わった後、チェンは「時間変更(通常の夜から朝に)があっても大きな問題ではなく、頭の中にあったことをすべて計算しなおす必要があるだけ。緊張もしたが、今回の経験で次の個人戦は、よりうまくできる。少なくとも、この場に来て、演技し学ぶ機会を持てたことは良かった。これからやるべきことを分析し生かして次に進むだけ」と前向きに語ったという。

 それでも16日のシングルスまで1週間ほどで、どこまで“魔の朝競技時間”に対応できるかは疑問だろう。