スノーボーダーの間では賛否のある五輪競技だが、平野は金を狙う。(写真:Shutterstock/アフロ)

男子のスロープスタイルを皮切りに平昌五輪のスノーボード競技が始まった。16歳の国武大晃(STANCER)は予選の組で14位に終わり決勝へ進むことができなかったが、今大会からスノーボード競技には、ビッグエアが加わり、男女合わせて計10種目となった。

 本来、スノーボーダーとしての総合力が試されるのはスロープスタイルだが、コンテストを退いているトラビス・ライス(35、米国)を超えるような選手が、今も現れない状況では、注目されないのも当然か。

 ビッグエアに関しても、トリックやスタイルの原点をたどれば、ジェイミー・リン(44、米国)、もしくはピーター・ライン(43、米国)にたどり着き、独創性の点で限界が見えてしまっており、なぜ今?という疑問しかわかない。

 そんな中で13日に予選が行われる男子のハーフパイプに関しては、2006年のトリノ五輪と2010年のバンクーバー五輪で連覇したが、前回のソチ五輪で惜敗したショーン・ホワイト(31、米国)が、雪辱を期す、という構図があり興味深い。

 おそらく優勝争いに関しては、そのホワイトに加え、前回のソチ五輪で銀メダルを獲得した日本の平野歩夢(19、木下グループ)、そして、「ワールドスノーボード・ツアー」で、男子ハーフパイプのランキングで1年以上もトップに立つスコッティ・ジェームス(23、豪)が軸になるだろう。
 現状、この3人に割って入るとしたら、スノーボード本来のオリジナリティを体現するベン・ファーガソン(23、米国)ぐらいではないか。

 いずれにしても、ホワイトにとっては今回が最後のオリンピック。そのホワイトに平野らが挑み、世代交代を目論む。そのとき、スノーボード界で、どんな化学変化が起きるのか。

 裏では、様々な思惑がうごめく。

 その話を進める前に──。

 2016年8月、スケートボードが東京五輪から正式種目に採用された。IOC(国際オリンピック委員会)と最大の放映権料を支払う米NBCテレビは、スノーボードの視聴率がいいことから二匹目のドジョウを狙った。五輪を見る人の年齢層が高くなっていることから、若い世代を取り込みたい、という思いも透けて見える。

 ただ五輪種目になったことを喜んでいるスケーターがいるとしたら、状況が見えていない。彼らは今後、数々の理不尽に次々と直面することになる。スケートボードは、五輪種目になるにあたって、ローラースケート、ローラーホッケー、インラインレースなどを統括するFIRS(国際ローラースポーツ連盟)という団体の傘下に入った──単に下にタイヤが付いている、という共通点だけで。

 相変わらず、IOCのスポーツに対する理解力のなさには、開いた口が塞がらないが、当初は、スケートの大会を企画したこともなければ、運営したこともないFIRSに、コース作りなども任せる予定だった。

 国際スケートボード連盟が猛抗議。当然である。彼らこそ、IOCが五輪にスケートボードを採用することを考えるようになってから、それまでバラバラだったスケート業界に緩やかな秩序を設け、大会を整備するなど、様々な交通整理をしてきたのである。

 スケーターらがボイコットを仄めかすと、FIRSも大会の運営権などは手放したが、スポーツの育成、選手の強化に充てられるIOCなどからの補助金は、統括団体であるFIRSに入る。一方で、国際スケートボード連盟には大会運営のアルバイト代程度しか入ってこない。五輪を通じてスケートボードが人気になり、お金が集まるようになって潤うのはFIRSであり、低迷するスケートボード業界全体にお金が回ることはない。

 まったく理不尽な契約構想だが、東京五輪に関しては国際スケートボード連盟は妥協した。彼ら自身、それを「悪魔の契約」と形容する。今後、FIRSが、大会の運営など全権を握ろうとするのは目に見えている。

 それにしても、こうした愚かな歴史が、なぜ繰り返されるのか。

 改めて俯瞰すれば、このスケートボードとIOC、FIRSの戦いは、スノーボードとIOC、そしてFIS(国際スキー連盟)による長年の争いの幕開けとなった頃の状況と酷似している。

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