高梨沙羅は銅メダル確定の瞬間、伊藤有希と抱き合った(写真・アフロスポーツ)

 平昌五輪シャンツェにきまぐれな強風が吹く。ジャンパーを悩ませる追い風がひどく、滑走順で不運にも、その風にあたってしまった選手は無残にたたき落とされて100mオーバーすらできなくなっていた。追い風だけでなく、ここでは、右サイドからの横風にあおられバランスを崩してしまう選手も出てきていた。

 2009年にオープンしたアルペンシア・ジャンプセンターのシャンツェは、ランディングバーンが広く作られ、飛び出しの部分の角度が11度と低く設定されている。標高800メートルの場所にあり、ここ特有の強風と横風で左右に流されないように選手の安全確保のためだ。しかも、ノーマルヒルは、K点までの水平距離が高低差の割には長いため、前方へなめらかに飛び出す低空飛行タイプの選手に向いている。それゆえ追い風にやられると、低い飛行曲線のまま、失速するケースが多い。ストレスのたまるジャンプ台であった。

 できることならば無風、あるいは少しの向かい風が欲しかった。

 高梨沙羅(21、クラレ)がスタート位置につくと不思議と風が落ち着いた。追い風はない。
 その表情は集中していた。両肩から上半身への硬さもまったくなかった。
 追い風は吹かなかった。運命の2本目。踏み切りのタイミングがドンピシャだった。空中においても上体がしっかりとブロックされ、滞空時間をキープ。着地までスムーズに移行、今季のベストジャンプとなった。
 103.5メートル。
 2人を残して暫定1位。高梨のメダルが確定した。
「自分を信じて無心で飛ぶことができました。あの4年前のソチ五輪のジャンプ。それは、リベンジできたように思います」
 うれしさいっぱいに、それでいてクールな眼差しで、ていねいに高梨は応えた。

 だが、ライバルのひとりアルトハウス(ドイツ)は気迫のこもったスピードあふれるジャンプで、風をつかみ飛距離を伸ばした。高梨の記録を上回る。そして現在のW杯リーダーでイエロービブを羽織る女王ルンビ(ノルウェー)も高い飛び出しから、タフな加速をもってサッツを切り、空中で良い風をつかみながら、110.0メートルのスーパージャンプを見せた。

 メダルの色は銅へと変わったが、それは4年越しとなる価値あるメダルだった。高梨はようやく五輪メダルを手にしたのだ。

「銅メダル、よかったです。ですがわたしはまだ金メダルの器ではありません。これからもより頑張っていかなければなりません」

 銅メダル獲得の背景には、五輪直前にスロベニアのプラニツァで行われた強化合宿にあった。W杯リュブノ大会を終えた日本チームは、そのままスロベニアに移動していた。
 

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