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 トランプ大統領の「ロシアゲート疑惑」など、米国でスキャンダルや汚職を表す際に「ゲート」と接尾辞がつけられることがある。その元となったのが1974年にリチャード・ニクソン大統領を辞任に追い込んだ1972年に起きた「ウォーターゲート事件」だ。

 2月24日公開の『ザ・シークレットマン』は、同事件を元FBI副長官マーク・フェルト(リーアム・ニーソン)の視点から描いた作品だ。

 

元FBI副長官が守りたかったものとは?

 大統領選の133日前、ウォーターゲート・ビルの民主党本部に何者かが侵入した。当初は単なるコソ泥事件として処理され、報道されたが、じつは当時のニクソン政権がライバルの民主党に盗聴器を仕掛けようとしたスパイ工作だったのだ。ホワイトハウスがその事実を隠ぺいしようと、連邦捜査局(FBI)の動きを阻もうとする。

 その状況下、事件の真相を知り、ニクソン政権の腐敗を暴こうとする謎の内部告発者「ディープ・スロート」が現れ、メディアに機密情報をリークし、焚き付けていく。その結果、真実が白日の下に晒され、米政治史上初となる任期中の大統領の辞任劇が繰り広げられた。

 そして、30年以上もの間、謎だった内部告発者の正体が2005年に明らかになった。元FBI副長官マーク・フェルトが、ヴァニティ・フェア誌で自らがディープ・スロートだったと公表したのだ。

 「世間の反応は、『あぁ、なるほど、この人だったのか』というのではなくて、『え、この人、誰?』という反応だったんです」

ピーター・ランデズマン監督(撮影:THE PAGE編集部)

 まず、その部分に興味をひかれたというピーター・ランデズマン監督は同作では、脚本もみずから執筆も手掛けた。調査報道記者、従軍記者として受賞経験もある監督は、フェルトの手記などをベースにし、フェルト本人や元FBI捜査官にも話を聞いて、徹底的にリサーチを行ったという。

 「フェルトは非常に複雑な人でした。昇進を逃して、逆恨みでやったんじゃないかなど、いろいろ言われていますけれど、真実はどこにあるか誰も知らないのです。調査を進めていくと、娘が家出をしていたり、奥さんとの関係も複雑だったり、家庭においても苦悩を抱えているなど、さまざまな側面が見えてきました」

 そして、フェルトの行動は、政治とはほとんど関係がなく、信念によるものだったとわかった。

 「彼のしたことは本当に英雄的だったと思います。ニクソン政権側がFBIの捜査の邪魔をし、その独立性が失われる瀬戸際に立たされていました。あらゆる代償も覚悟の上、FBIを危機から救いたいという使命感からその行動を起こしたのでしょう」

 政府の発表に何の疑いも抱かなかったマスコミ。なぜこのような事態を招いたのだろうか? 

 「マスコミも混乱していたんだと思います。なんか奇妙な事件ですよね。だれかが侵入してゴソゴソやっている、だれがなんの魂胆があってやっているのかわからないし。だれも真剣に取り扱わなかったんですよね。でもフェルトは3、4日後には、これはホワイトハウスの仕業だと気付きました。この真実に気付いてほしいと思って、何度もマスコミの注意を引き付けようとしましたが、だれも興味をもってくれなかったのです。そして、我慢できなくなって、ワシントン・ポスト紙のウッドワードにリークし始めたんです」