羽生が切り開いた究極の4回転時代(写真・ロイター/アフロ)

平昌五輪の男子フィギュアスケートは壮絶なハイレベルの争いの末、3か月ものブランクがあった羽生結弦(23、ANA)の劇的な連覇で幕を閉じた。右足首の靭帯損傷という大怪我の影響で今季から挑戦していた4回転ルッツ、ループという2種類の4回転ジャンプを封印した羽生は、4回転サルコー、4回転トゥループという2種類4本の4回転ジャンプで頂点を極めた。銅メダルのハビエル・フェルナンデス(26、スペイン)も2種類3本の4回転で勝負。SPで17位と出遅れたネイサン・チェン(18、米国)が3種類5本の4回転で猛追。銀メダルを獲得した宇野昌磨(20、トヨタ自動車)も、3種類4本の4回転で羽生に迫ったが、勝負を分けたのは、4回転ジャンプの質であり、演技を作品ととらえる完成度の高さだった。

元全日本2位で現在福岡で後進の指導を行っている中庭健介氏は、男子フィギュアをこう総括した。

「羽生選手は故障の影響もあり、やりたい演技ではなく、やるべき演技を貫きました。まるで見えない力に動かされているような魂の宿った神がかった雰囲気がありました。金メダルが決まった瞬間の涙は、彼にとって史上最高の涙でしょう。故障による影響で、心配していた後半は少し苦しそうでした。特に4回転サルコー+3回転トゥループを跳んだ直後には、体力と共に瞬発力を奪われ、4回転トゥループから2回転トゥループへの連続ジャンプでファーストジャンプがステップアウトしてしまい単発に終わり、最後の3回転ルッツも乱れましたが、《SEIMEI》の世界観を壊すような大きなミスではありませんでした。しかし、フェルナンデスが、後半の4回転サルコーを失敗していなければ、どうなっていたか、わかりませんでした。あのミスだけで10点弱のマイナスでしたから。金、銀、銅の3人は、技術力、プログラムの構成力、表現力、芸術性のすべてが際立っていました。五輪史上最高の3人でしょう」

中庭氏は進化し続けてきた4回転時代のひとつの方向性が見えたという。

「今回は、4回転の種類、本数よりも、そのジャンプの質が問われた大会となりました。進化を遂げた4回転時代のひとつの向かう方向性を示したのかもしれません」

 冒頭の4回転ループで転倒、それでも後半の演技をパワフルにまとめて銀メダルを獲得した宇野は、「ジャンプの質を高めていかなければ」という話をしていた。
 ジャンプの質とは、踏み切り、着氷の前後を含めた正確性、高さ、回転力、ジャンプの幅、そして、気品を感じるような美しさだろう。

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