パシュートの金メダルを生み出したのは計算尽くされた美しい隊列だった(写真・アフロ)

平昌五輪の女子スピードスケート団体追い抜き(チームパシュート)の準決勝、決勝が当地で行われ、高木美帆(23、日体大助手)、姉の高木菜那(25、日本電産サンキョー)、佐藤綾乃(21、高崎健康福祉大)の3人で挑んだ決勝でオランダを破り、日本初となる金メダルを獲得した。オランダとは1秒59差だった。同種目での表彰台はバンクーバー五輪の銀メダル以来。冬季五輪の姉妹によるメダル獲得も日本初。日本の今大会の獲得メダル数は合計11個となり、長野五輪の10個を超える過去最多のメダル数になった。

  日本は負けていた。
 2.5周目でオランダに逆転を許す。徐々に広がる秒数。4周目、1400メートルを過ぎるあたりでは最大0秒47秒差まで広がる。だが、残り2周を切った時点で、先頭に交代した1500メートル銀、1000メートル銅メダリストの“エース”高木美帆が一気にスパートをかけた。佐藤綾乃と姉、高木菜那の頑張りで温存していたスタミナが爆発した。5周目で逆転。ゴールラインを切ったとき、オランダとの差は1秒59差あった。五輪レコードとなる2分53秒89で金メダルを獲得した。
 歓喜のウイニングラン。
「本当に、この優勝はチームの全員の力がないと成し遂げることができなかった金メダルだと思う。自分の力だけではなく、みんなだったから取れた金メダル。感無量です。最初は、少し気持ちが入りすぎて飛ばしすぎたところもあったんですが、そのあと2人がうまくつないでくれた。最後までまとまって滑ることができてよかったと思います」
 高木美帆は「チームの力」を強調した。

 レース前の円陣。
 ヨハン・デビットコーチ(38)が語りかけた。
「オリンピックで金メダルを取りたいが最高のレースをして楽しんで来い!」
 高木美帆の姉、菜那は、「自分の滑りだけに集中しようという気持ちになれた。円陣があって、みんなの力がひとつになってオリンピックレコードで優勝できた」と、彼女もまた「みんなの力」を口にした。

 メダリストをズラっと並べた最強オランダが「個の力」で勝負するのならば、日本は団体戦ゆえの「和の力」での勝利を追及した。

 勝利の鍵は3人の足がリンクして動いた一糸乱れぬ美しい隊列である。

 メダルを獲得できず惨敗したソチ五輪の反省から金メダル計画がスタートした。
 年間300日の合宿を張り、2015年にライバル国のオランダからデビットコーチを招いた。風洞実験を繰り返して、空気抵抗を減らすための戦術を科学的に研究した。活動拠点となる長野のエムウェーブの天井に等間隔に28台のカメラを設置してデータを集め、先頭交代のタイミングや、その際の角度、横へのずれ、選手間の距離を徹底してつきつめ、一糸乱れぬ美しい隊列を生み出した。