上方落語の桂春蝶さんが「貧困は絶対的に自分のせい」とツイートしたことで炎上騒ぎとなっています。貧困に陥ることが自己責任なのかについては様々な意見がありますが、春蝶さんと批判する人の間には大きな断絶があるようです。

桂春蝶さんのツイッター

 春蝶さんは20日、自身のツイッターで「世界中が憧れるこの日本で「貧困問題」などを曰う方々は余程強欲か、世の中にウケたいだけ」「この国での貧困は絶対的に「自分のせい」なのだ」とつぶやきました。これに対しては批判が殺到し、ちょっとした炎上騒ぎとなりました。

 春蝶さんは若い頃、お金がなく苦労した経験があるそうですが、父親の名前を襲名した世襲落語家で、本当の苦労人とはいえなかったことや、その直前のつぶやきで「TV番組を叩いているのは、結局「反安倍」の人たち」という政治的な発言をしていたことも、火に油を注いでしまいました。

 ネットでは「障害や重病で働けない人も自分のせいなのか?」という批判も出ているようですが、春蝶さんは「世の中に感謝して歩むべき」という趣旨で発言しており、こうした環境にある人を否定したわけではなさそうです。

 ただ春蝶さんの認識にはかなりの誤りがあるのも事実です。春蝶さんは「この国では、どうしたって生きていける。働けないなら生活保護もある」と述べていますが、日本の福祉制度は先進国では最低レベルです。特に問題なのは苛烈な自己責任国家である米国並みに状況が悪いことです。

 欧州各国に手厚い福祉が存在することはよく知られていますが、米国は苛烈な自由競争主義で福祉がほとんどないというイメージがあります。しかし現実はだいぶ異なるといってよいでしょう。

 米国の福祉制度は日本とは異なりますから単純比較はできないものの、食費の補助(フードスタンプ)や住宅補助、暖房費補助、ミルク代補助、給食費無料制度など数多くの福祉メニューが揃っており、多くの人がこうした制度を活用しています。日本の場合、制度が少ないことに加え、生活保護の捕捉率が2割程度しかないといわれており、必要とされる人に支援が行き渡っていないという問題が指摘されています。

 福祉をどの程度の水準にするのかについては様々な意見があると思いますが、世界で最も福祉が行きわたっていないイメージがある米国よりも、さらに水準が低い可能性があるというのは、かなりの問題といってよいでしょう。日本経済全体の基礎体力が弱くなれば、必然的にパイの奪い合いとなり、相対的に力の弱い人が貧困に陥る可能性が高くなります。感情的に批判し合うのではなく、現実を見た上での冷静な議論が必要でしょう。

(The Capital Tribune Japan)

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