富士山の歌を広く公募して大賞を決める「富士山大賞」の授賞式=東京都中央区

 山部赤人に代表されるように古代、万葉の時代から富士山は歌人たちによって詠まれてきた。その作品の数々が富士山を心に刻み、富士山を「日本の文化」たらしめてきた。富士山は世界遺産となり、さらに多くの人たちが富士山を歌に詠むようになった。そのムーブメントは海外にも広がっているようだ。外国人が詠む富士山の歌とは果たしてどのようなものだろうか?

 東京都内で東久邇信彦氏が会長を務める富士山大賞の授賞式が行われた。「短歌を通して富士山から受けた感動や暮らしの姿を広く伝える」ことを目的に、2016年より作品を公募している富士山大賞。選考委員長に宮内庁和歌御用掛の岡井隆氏、選考委員を日本歌人クラブ会長の三枝昴之氏のほか、穂村弘氏、東直子氏が務めている。

 2回目となった今回は、昨年5月から9月20日にかけて、富士山を詠んだ短歌、富士山に登った感動や山に登った思い出を詠んだ短歌を、インターネットなどを通じて広く一般から募集した。1000首余りの応募があり、その中には海外からの応募も数多くあったという。

外国語短歌優秀賞を受賞したKath Abela Wilsonさん(右)

 選者による選考を経て、大賞は東京都の庄野史子さんの作品「ねむたげなるひとを窓辺に誘ひて 明けゆく空に富士を見てゐつ」、準大賞は北海道の北山文子さんの作品「頂の雲にイデアを眠らせて 富士の名をもつ山々がある」、東京都の小林裕美さんの作品「幼子に『あれが富士よ』と教えた日 疾風の如く過ぎ去りし窓」に決定したが、それ以外にも優秀賞や学生最優秀賞、さらに外国からも数多くの作品が寄せられたことから、外国語を対象にした部門も設けて外国語作品の優秀賞、佳作が発表された。

 では、外国語で詠んだ富士山の歌とはどのようなものなのだろうか? 優秀賞となったアメリカのKath Abela Wilsonさんの作品は、富士という言葉を音でとらえたもの。

fuji fuji
at first sight the sound
of a small bird
for me it is the voice
of this mountain

フジ フジ 最初は小さな鳥の鳴き声に 聞こえたその響きは今私にとって この山の聲

 講評を寄せた選考委員長の岡井氏は「短歌のリズムに近い短詩として書かれていて評価します。フジ、フジを小さな鳥の鳴き声と詠んだ叙情性がとても魅力的」と評価した。やはり優秀賞となったオーストラリアのDavid Terelinckさんの作品は富士山と人との関係を重ねて表現した作品のようだ。

fujisan's peak
plateaued by clouds -
that moment
when I know I don't know
enough about you…

富士山の山頂が 雲で平らになった その瞬間
あなたについて 何も知らなかったことに気づく

 授賞式では、壇上に受賞者が勢ぞろいし、その中には着物姿のKath Abela Wilsonさんの姿も。「多くの方が富士を見つめながら自分を見つめ、短歌1400年の膨大な歴史の蓄積に思いを馳せながら短歌をつくることを楽しんでいただきたい」と選者の三枝氏。「富士山を通じて海外での短歌への関心がさらに高まることを期待する」との声も聞かれた。第三回富士山大賞は2018年6月3日から作品を募集する予定だという。詳しくは富士山大賞のサイト(http://www.fujisantaisho.com/)で発表される。

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