裁量労働制をめぐって厚生労働省が作成したデータに不備が見つかったことから国会が紛糾しています。政府は、今国会に働き方改革関連法案を提出予定ですが、この中には裁量労働制の範囲拡大が含まれています。もし法案が通った場合、具体的にはどのような業務にまで裁量労働制が拡大するのでしょうか。

裁量労働制をめぐって厚労省が作成したデータに不備が見つかり、国会が紛糾(写真:Natsuki Sakai/アフロ)

 裁量労働制とは、実際の労働時間が何時間だったのかにかかわらず、事前に定めた時間だけ働いたとみなす制度です。事前に定められた労働時間のことを「みなし労働時間」と呼びますが、実際にこの時間を超えて労働を行っても残業代は支払われません(みなし労働時間を何時間に設定するか、休日・深夜の扱いをどうするかによって状況は変わってきます)。

 現在は、研究開発職、ジャーナリスト、大学教授、会計士、弁護士といった専門職(専門業務型裁量労働制)や、経営企画部門の社員など、一部の職種(企画業務型裁量労働制)にのみ適用が許されています。今回提出予定の法案では、この範囲をさらに拡大する内容が盛り込まれる予定です。具体的には、企画業務型の範囲を拡大し、「課題解決型の開発提案業務」と「裁量的にPDCAを回す業務」が追加されます。

裁量労働の適用範囲

 課題解決型の開発提案業務は、いわゆるコンサル営業的な仕事が該当すると考えられています。一般的な商品の営業は該当しないとされていますが、どこまでを課題解決型とするのかは微妙なところです。

 もうひとつのPDCA型はさらにやっかいです。PDCAとは経営学の用語で、 Plan(計画)→ Do(実行)→ Check(評価)→ Act(改善)という一連のサイクルのことを指します。業務を管理するような立場にいる人であれば、何らかの形でPDCAによる業務改善を行っていますから、こちらもやりようによってはあらゆる業務がこの範疇に入ってしまいます。

 同時に議論される予定の高度プロフェッショナル人材と異なり、裁量労働制には年収の下限は設定されていません。この制度が企業によって濫用された場合には、多くの労働者が裁量労働への移行を余儀なくされ、事実上、残業代が支払われなくなるか、わずかな残業代で長時間労働をせざるを得ない状況になるでしょう。

 経済界は賃上げを受け入れる代わりに、この法案の実施を強く要望しているといわれています。安倍政権はデータ不備について陳謝しましたが、この法案は撤回しない方針です。もし可決された場合には、残業代が減少する社員が増えることはほぼ間違いありません。

(The Capital Tribune Japan)

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