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 2月2日に発表された1月の米国雇用統計では平均時給が市場予想を上振れました。これを受けて俄かにインフレ圧力が意識されると、それが連邦準備制度(FED)の引き締め観測を喚起し、米金利上昇を誘発しました。それが米国株の急落を招くと、日本の金融市場では円高・株安が進行しました。

【連載】マーケットの動きがわかる 経済指標深読み

日米金利差とUSD/JPY 密接な連動性が現れるときとは?

 一般論として米金利上昇は日米金利差拡大を通じてUSD/JPY上昇要因になると理解されており、実際、日米金利差とUSD/JPYは密接な連動性を有します。しかしながら、そうした関係は「金融市場が落ち着いているときに限られる」という条件がつきます。

 今回がそうであるようにリスクオフを伴って金融市場が大幅な変動を経験している最中は、米金利上昇(≒日米金利差拡大)がUSD/JPY上昇に結び付かないことが多々あります。その典型例としては2013年央、当時の連邦準備理事会(FRB)議長バーナンキ氏がQEの段階的終了を示唆したことをきっかけとするテーパータントラムが挙げられます。当時も米金利上昇が株価に打撃を与えことで、投資家のリスク許容度が削がれ、その結果として(相対的に)安全資産のJPYが買われました。今回、米金利上昇とUSD/JPY下落が併存した基本的背景と類似しています。

徐々に落ち着きを取り戻しつつある金融市場

USD/JPY・日米10年債金利差

 もっとも、足元では「金融市場の落ち着き」が徐々に戻りつつあります。米国株VIX指数(恐怖指数)は5日に37.32まで急上昇した後、23日には15.80へと低下し、2月2日の17.31よりも低い水準に回帰しました。NYダウは節目の25000ドルを回復し、下落の半分程度を取り戻した格好となります。

 こうした安定的な状況が続けば、日米金利差とUSD/JPYの連動性(方向感の一致)が再び強まる可能性が高いと考えられます。米金利が急上昇する前までに観測されていた水準の関係はすでにリセットされているため、新たな線形関係がどのような水準感で形成されるかは判断が難しいものの、今後、米国経済の拡大期待が強まるなどして米金利に上昇圧力が生じた場合は、素直にUSD/JPYが上昇する可能性が高いでしょう。

 米10年金利の3%接近に株価が脆弱であることが判明した以上、115-120レンジへの到達の可能性は低下しましたが、それでもFEDが年3回ないしは4回ペースで利上げを実施するとの見通しはさほど変化しておらず、USDの上昇圧力は残っています。諸点に鑑みて、筆者はUSD/JPYの先行き12ヶ月の見通しを従来どおり113とします。

(第一生命経済研究所・主任エコノミスト 藤代宏一)
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