松本亮(右)は、世界初挑戦で才能を生かしきれなかった(写真・山口裕朗)

プロボクシングのWBA世界スーパーバンタム級タイトルマッチが2月28日、後楽園ホールで行われ、同級11位の松本亮(24、大橋)が王者のダニエル・ローマン(27、米国)に初挑戦したが、スピードとインファイトに翻弄され0-3の大差の判定で敗れた。初防衛に成功したローマンは、試合後、「次の次は亀田でいい」と、次戦に予定されているモイセス・フローレス(メキシコ)との指名試合をクリアすれば、同級3位の亀田和毅(協栄)の挑戦を受ける考えであることを明らかにした。亀田和毅は、2015年9月にWBA世界バンタム級タイトルマッチでジェームズ・マクドネル(英国)に敗れて以来、世界戦リングには立っていない。

 メディアでごった返す後楽園ホールの狭い通路をドーピング検査を終えた王者のローマンが通る。傷ひとつない綺麗な顔をしていた。一方、24歳の敗者の顔は、痛々しい赤い傷がところどころ。せっかくのイケメンが台無しになるほど無残に腫れていた。
かすれた声。
松本が言葉を搾り出す。
「相手のペースでいってしまった。しょうがない。長い距離で戦おうとしたけどダメだった。バランスを崩した。(王者は)パンチ力も、スピードもそう感じなかった」
 
判定は2人が「119-109」、1人が「118-110」。12ラウンド中、松本が取ったとされるラウンドは、わずか二つまでとジャッジされたのである。完敗だった。

 左ジャブは多く出た。10センチの身長差とフィジカルの強さを生かしたかったが、スピードにまさるローマンに、まるでメキシカンのような多彩な角度からパンチを繰り出され崩された。身長差を逆手にとるように懐に入られ、飛びあがるようなパンチにも意表を突かれた。

「前に出ろ」。セコンドから松本好二トレーナーの指示が飛ぶ。

「でも、いけなかった」

 やるか、やられるか。
ガードの甘さが致命的な松本は、殴り合いの中に勝機を見つけたかったが、下がらされ、崩されての苦し紛れの体勢からのパンチだから体重が乗らない。しかも、先に当てるのは、すべてローマンだった。

 左のボディアッパーは松本の必殺ブロー。しかし、これもことごとく肘でブロックされた。

 半身になりインサイドに滑りこんでくるローマンの百戦錬磨のテクニックに翻弄されているうちにラウンドが経過していく。ロープを背負い動きがストップするシーンも。もういつ止められてもおかしくなかった。
 10ラウンドには右のボディストレートをくらって腰を折った。
 最終ラウンド。
 「ほとんどのラウンドを私が支配していた。勝っていたが、力の差をもっと見せつけたかった」
 ポイントで圧勝しているはずのローマンが万に一つの危険を顧みず倒しに来た。
 チャンピオンらしい尊いファイトだった。
 松本も迎え撃つ。壮絶な殴り合いで最終ラウンドのゴングを聞くが、いかんせん、松本のクリーンヒットは、1ラウンドから12ラウンドまで数えるほどもなかったのである。
 
 世界とのレベル差をどう感じたか?と聞かれた松本は、「負けた立場で何も言えない……」と答えるのが精一杯だった。