体重超過で山中を倒したネリを米メディアも問題視(写真・山口裕朗)

 米メディアもWBC世界バンタム級タイトルマッチで、計量失格して階級が上の状態だったルイス・ネリ(メキシコ)が、再戦で山中慎介(帝拳)を2回TKOで破った試合の是非を問う記事を発信した。ボクシング専門サイトの「ボクシング・シーン」が報じたもので、「山中が1度倒されたことのある10歳以上も若い選手(ネリ)と対戦するときに、その選手が1階級以上も体重をオーバーした状態で再戦することはフェアなことだろうか」との疑問を呈した。
 
 ネリは、前日計量で一度目に2.3キロオーバー、2時間の猶予後も1.3キロオーバーで失格、王座剥奪されたが、この日は、さらに増量し、ライト級ボクサーの階級の体重。その威力の増したパンチで山中をKOした。海外メディアも、その不公平さを問題視した。
 
 同記事は、昨年8月に山中がネリに4回TKO負けした後、ネリのドーピング違反疑惑が発覚したが、WBC側が「禁止薬物入りの牛肉を食べた」というネリ側の主張を聞き入れ不問に付したことにも触れ、「メキシコで練習を積んでいる選手が禁止されている薬物を使用した後で、悪い牛肉を食べてごまかすというようなリスクは出てこないのだろうか。誰かが、この問題を論理的に問うべきだ」と問題提起した。
 
 その上で山中が2011年から2017年まで12度タイトルを防衛し、その中には、数々の印象に残る試合があったことを紹介。

「山中は、これらの戦いで、すべての選手のために体重を整えてきた(計量一発クリア)。この再戦でも、もう一度整えた。薬物テストもすべてクリーンだった。山中は、このような疑惑の雲に包まれたような状態で敗れるべきでない」と、山中を援護した。
 
 そしてドーピング疑惑に続き確信犯的な計量超過までやった“悪のデパート”のようなネリを断罪した。

「ネリを応援するファンにとっても、この日の試合は恥ずべきことだった。メキシコの視聴者や、米国で彼の成長を見つめてきたファンたちは、ネリ対山中の最初の試合には興奮したものだ。ネリは、とても才能があり技術もある若手ファイターなのだが……前回の(薬物)テストの結果で、日本の井上尚弥や激戦の115ポンド(スーパーフライ級)から階級を上げてくる選手との将来的な対戦についても疑問が生じている」
 
 具体的にバンタム級に転級する井上尚弥(大橋)の名前を挙げ、今後、ネリとの対戦を他のボクサーが敬遠する傾向になると予測した。
 日本でも、今回のネリの愚行を受け今後、計量失格するケースを撲滅するため、ルールの厳格化を求める声が出ているが、同記事も計量オーバーで失格となるケースが米国内でも頻繁に起きている実態を問題視した。

「体重リミットを守れない問題について、ボクシング界は真剣に取り組むべきだ。近年世界戦でこのようなことが頻繁に起こりすぎている。だが、計量失格があっても、テレビネットワークは放送をキャンセルすることはない。もしかするとキャンセルするべきかもしれないのだが、統括団体は、この流れを変えるような厳しいペナルティを科すことはしていない」

 そして「不公平なビジネスで、しばしば起きる不公平な問題だ」と、計量失格がまかり通る背景に、その競技性よりも、ビジネスが優先される状況があることを指摘した。

「山中を再評価すべきだ」という論調で筆を進められた記事だが、「山中はネリに今回負ける前から下り坂の兆候を見せており、35歳のバンタム級選手では時計の針を戻すことはなかなかできない」という厳しい見方も記されていた。

 リング誌も、「ネリと山中の再戦は、2回とも同じく早い決着となり同様に汚点が付いた」と試合結果を伝えると同時にネリの計量失格の問題を“汚点”と評した。

 ただ、リング誌は、体重超過問題を、それほど問題視しておらず、ネリが山中に2試合連続でTKO勝利したことでドーピング疑惑を晴らしたという的外れな論調だった。

「1回目の試合のように山中は対戦相手の攻撃を対処できず計4度キャンバスに崩れた。ベルトは山中だけが巻ける可能性があったが、以前、パウンド・フォー・パウンド候補だった選手には、わずかなチャンスも残っていなかった。ネリのフィニッシュは冷静かつ決定的だった。ネリの山中に対する2つの勝利は疑惑を超えた(内容)といえる」

 また同紙は、「6年以上にわたり12度タイトルを防衛してきた山中のキャリアは終わりを迎えそうだ」と、山中の現役引退の可能性を伝えた。

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