[写真]ベルルスコーニ元首相(左)が率いるフォルツァ・イタリアとサルビーニ氏(右)が書記長を務める北部同盟の右派連合で3割近く得票すると予想されている(ロイター/アフロ)

 イタリア中部の町マチェラータで先月3日、アフリカ系移民を標的とした発砲事件が発生し、6人が負傷した。事件から間もなくして、地元警察は28歳のイタリア人男性を容疑者として逮捕している。マチェラータでは銃撃事件が発生する数日前に、18歳のイタリア人少女が殺害され、遺体はバラバラにされた形で発見されている。警察は殺人事件の容疑者としてナイジェリア人男性を逮捕。数日後に発生した銃撃事件はその報復であったと、容疑者はのちに認めている。3月4日に総選挙が控えるイタリアでは、EUとの関係が大きな争点となっているが、同時に大量の移民が暮らす現在のイタリアや、移民によって引き起こされたとされる凶悪事件への対応も大きな争点となっている。イタリア国内の右派政党はさっそく、移民問題を選挙の大きなテーマに掲げている。

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容疑者の自宅からナチ思想関連の出版物

 事件は2月3日の午前11時ごろに発生した。マチェラータ近郊に住むルカ・トライニ容疑者(28)は、車で市内を徘徊してアフリカからの移民に目をつけ、運転しながら発砲した。アフリカ系移民への発砲は市内の2か所で行われ、6人が重軽傷を負った。全員黒人で、イタリア公共放送局「RAI」の報道によると、出身国はガーナやガンビア、ナイジェリア、マリなどさまざまであった。トライニ容疑者は市内にある与党「民主党」の事務所に向けても発砲している。

 銃撃から間もなくして、市中心部でトライニ容疑者が憲兵隊によって逮捕されている。逮捕直前、トライニ容疑者は上半身裸の格好で、肩からマントのようにイタリア国旗を羽織っていた。市内にある戦没者のための慰霊碑によじ登り、ファシスト式の敬礼をしているところを拘束された。静かな町の中心部で発生した銃撃事件と逮捕劇。トライニ容疑者が拘束される様子をスマホで撮影する市民もいた。

 地元警察はトライニ容疑者の自宅を家宅捜索し、アドルフ・ヒトラーが書いた『わが闘争』やナチ思想に関連した複数の出版物を押収したことを明らかにしている。スキンヘッドで額にはネオナチのシンボルをタトゥーとして入れているトライニ容疑者は、昨年行われた地方選挙で、右派政党の「北部同盟(※)」から出馬したものの、ほとんど票を獲得することができずに落選している。イタリアのアンサ通信は、トライニ容疑者が過去にネオファシスト系の極右組織と繋がりがあったと伝えている。

 マチェラータの事件には伏線があり、1月後半に市郊外でバラバラにされた人間の遺体が入ったスーツケースが発見された。間もなくして、遺体は18歳のイタリア人少女であることが判明。殺害されたイタリア人少女は直前まで薬物依存者向けのリハビリ施設に入所していたが、施設から離れた直後から行方不明となっていた。1月29日、捜査当局はマチェラータ在住のナイジェリア人の男を殺人や死体遺棄などの容疑で逮捕した。容疑者は2014年にイタリアに入国し、難民申請者として暮らしていた。殺害された少女との接点には不明な点も多い。その数日後にマチェラータで銃撃事件を起こしたトライニ容疑者は、イタリア人少女殺害に対する復讐としてアフリカ出身者を狙い撃ちにしたと、イタリアの現地メディアは伝えている。

 昨年夏にはローマで、バングラデッシュ人がフィンランド人女性に対する強姦容疑で逮捕され、その直前にはアドリア海に面した観光地リミニの海岸で、ポーランド人女性がコンゴ人の難民申請者を含む4人の少年らに強姦される事件が発生。リミニの事件では、容疑者のうちの3人が未成年であった(2人はイタリアで生まれたモロッコ系)。昨年夏に相次いで発生した強姦事件の容疑者がアフリカ出身者やイスラム教徒であったことも影響し、イタリア国内の移民に対する世論も大きく変化。昨年9月にイタリアの全国紙「ラ・リパブリカ」が実施した世論調査では、「移民は日々の生活や安全な環境に対する脅威になっている」と答えた回答者が全体の46パーセントに達した。同様の質問が行われた2012年の質問から、実に20ポイント以上の上昇を見せたのだ。

※「北部同盟」から「同盟」に改称しましたが、この記事では「北部同盟」表記で統一します。

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