見せ場は作るがJ本格デビューの久保は2試合得点なし(写真・アフロスポーツ、開幕時)

 胸中に秘められた思いが、言葉に変わることはなかった。相手ゴールへ向かってほぼ正面、約18メートルの距離で得たFC東京の直接フリーキック。セットされたボールの後方に立ったのはMF東慶悟と、左利きのDF太田宏介だった。

 ホームの味の素スタジアムで、3日に行われた明治安田生命J1リーグ第2節。ベガルタ仙台に1点をリードされて迎えた、後半32分の絶好のチャンス。相手のファウルを誘発したのは、直前にトップ下として投入されていた16歳のJリーガー、久保建英だった。

 敵陣の中央でルーズボールを自らの間合いに収める。トラップすると見せかけて、時計回りで素早くターン。前へ進もうとする勢いを力に変えて、FW石原直樹との球際の攻防をまず制した。
 ベガルタのゴールへ向けて加速していく「15番」に、危険な雰囲気を感じたのか。ベガルタのキャプテン、MF富田晋伍が死角から突っ込んでくる。必死に伸ばした右足が久保の両足を刈り取った瞬間、主審のホイッスルが鳴り響いた。

「負けていなかったら、もしかするとターンしなかったかもしれません」

 試合後の取材エリア。強引にも映るターンで、意図的に相手のファウルを誘ったと明かした。瞬時の判断から狙い通りの展開を手繰り寄せ、さらに自身の左足には高精度のキックを宿らせている。

 もっとも、ファウルを獲得した直後こそボールの近くに立っていた久保は、相手ゴール前でこぼれ球を狙える位置へ離れていった。果たして、東の右足から放たれた直接フリーキックはベガルタが作る壁に当たり、ゴールラインを割った。

 おそらくは試合前にセットプレーのキッカーは指名されていたはずだ。それでも自分で獲得した直接フリーキックを蹴りたい、という思いに駆られるのがプロでもある。胸中を直撃すると、こんな言葉が返ってきた。
「蹴りたいのは蹴りたかったですけど。東選手は練習から、本当にいいシュートをされているので」