大谷は2度目の先発で8奪三振をとったが相手はマイナー。動かないボールをどう克服するのか(写真・アフロ)

 3月に入りようやく寒さもゆるんだが、日陰に入ると手がかじかむほどの寒さとなったその日、客席は熱気に包まれていた。

 まるでプレイオフのような雰囲気に、ジャスティン・アップトン(エンゼルス)はその盛り上がりをカメラに収め、兄のメルビン・アップトン(インディアンズ)に送った。

 調整に集中できているのだろうか。多くの日本人メディアが駆けつけることで、それを迷惑と感じる選手もいるのではないか。距離のとり方にはいつも気を使うが、「いや、弟はむしろ楽しんでいた」とメルビン。

「キャンプは長いし、単調だ。客席が盛り上がっているなら、そのほうが選手は集中できるものさ」

 ジャスティンが送った写真の中には、背番号17を背負った投手も映っていた。

 その日 ── 2月24日、エンゼルスの大谷翔平が、投手としてメジャーデビューを飾っている。週末ということもあり、客席は6000人を超えるファンで埋まり、メディアの数は、日米合わせて100人以上。球場全体が沸き返った。ロサンゼルス・タイムズ紙は、「エンゼルスのオープン戦の歴史で、最大の試合」と形容。

 ところがあの日、早々に冷や水が浴びせられている。

 初回、先頭のジョナサン・ビアー(ブルワーズ)は、カウントが3−1となって、真っ直ぐに狙いを絞った。

「3-1なら、90%以上の確率で真っ直ぐが、来るから」

 3−1で4シーム(ファストボール)が来る確率は、メジャーの場合、年々下がって80%台の前半だが、大谷翔平の日本時代の傾向としては90%以上という。

 それを知っていたのかどうかは分からないが、案の定、オープン戦とはいえ、メジャー初登板となった大谷が4シームを投じると、ビラーはそれを捉え、打球はセンターの頭上を超えていった。

「逃すはずがないよ」と言ったのは、結果が出たからこそ、なのかもしれないが、彼は続けてもう一言、気になることを言っている。

「4シームが動かない。きれいな真っ直ぐだ」

 大谷の4シームの球筋がきれいなことは、日本でも指摘されていた。2回にレフトへ本塁打を放ったキーオン・ブロクストン(ブルワーズ)も同じことを口にしている。

「本当にきれいなストレートだ。動かない」

 昨季、143試合に出場し、20本塁打を放った彼に対し、大谷は3球続けて4シームを投げた。打たれたのは1−1からの3球目。

「あの動かない球を打てなければ、俺達はここにはいない」