安倍政権は、今国会に提出予定だった働き方改革関連法案をめぐり、裁量労働制に関する部分の法案提出を断念する方針を固めました。裁量労働制を導入するためには、企業の経営がそれにふさわしい体制になっている必要がありますが、日本の場合はそうではなかったようです。

厚生労働省の不適切データ問題がきっかけで「裁量労働制」に関する法案提出は断念(Natsuki Sakai/アフロ)

 裁量労働制とは、実際の労働時間が何時間だったのかにかかわらず、事前に定めた時間だけ働いたとみなす制度です。現在は、一部の職種に限定されていますが、今回提出予定の法案で、その範囲を拡大させる予定でした。

 裁量労働制は、労働者の自主性に任せる方式ですから、うまく機能させれば働き方改革を実現する手段となります。しかし、付加価値が低い企業がこれを導入した場合、際限ない長時間労働を誘発する危険性があり、今回の法案についてはその懸念が多方面から寄せられていました。

 現実問題として、日本企業は薄利多売になっているところが多く、先進諸外国の企業と比べて収益性が低いことはよく知られています。経営者はもちろんのこと、労働者の側も、グローバル化やAI化といった高付加価値な仕事に対してはあまり積極的ではありません。現在の日本企業の経営状況では、裁量労働制の導入は難しいのかもしれません。

 こうした中、時間に対して賃金を支払うという既存の働き方を踏襲しつつ、ある程度、柔軟性を持たせるやり方として時差出勤制度を検討する企業が増えているようです。

 セブン&アイ・ホールディングスは3月1日から、約1万人のフルタイム社員を対象に、時差通勤制度を導入しました。1日の労働時間は変わりませんが、一律で午前9時となっていた始業時間について、8時、9時、10時の3つから選ぶことができます。

 出社と退社の時間が多少、自由になるので、保育園の送り迎えなどには有効活用できそうです。一方、この制度では10時から16時30分までの時間帯であれば、全員が出社していることになりますから、顔を合わせて仕事をするという従来の職場環境は維持されることになります。

 こうした制度に対しては、基本的に従来と何も変わっていないと指摘する声も出ているようですが、今の日本企業の現状を考えた時には現実的な方法なのかもしれません。

(The Capital Tribune Japan)

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