新化石の発見が、現生の生物からは想像できない複雑な進化のプロセスの可能性を示唆することがあります。中国雲南省の約2億4000万年前の地層から、腹部に胎児を抱えた初期主竜類ディノケファロサウルスの骨格化石が見つかりました。

 今まで知られる中で最も古い胎生を行っていたとみられる爬虫類化石の発見には、どんな意味があるのでしょうか。古生物学者の池尻武仁博士(米国アラバマ自然史博物館客員研究員・アラバマ大地質科学部講師)が、執筆します。


爬虫類における主竜類アルコサウルス

中国南西部の三畳紀中期(約2億4000万年前)の地層から見つかった初期主竜類爬虫類のディノケファロサウルス。恐竜の起源と多様性を探るうえでカギとなる情報が隠されている可能性がある(写真提供:Jun Liu博士)

 「主竜類」という名の爬虫類グループをご存じだろうか? 英語でarchosaursとつづり、「アルコサウルス」と発音する。「聞いたことがないかもしれない」「初めて耳にする」と言う方。覚えておいても損はないかもしれない。一般教養の知識として、コーヒータイムの余興として、生物進化の神髄に迫る入り口として(おおげさだ)。

 主竜類 ── アルコサウルス類とは、直訳するとギリシャ語で「君臨する・支配する(archo-)」+「トカゲ(-saur)」という意味だ。1869年にアメリカの伝説的な古脊椎動物学者エドワード・D・コープ(E. D. Cope)によって初めて命名された。「生態系上に君臨し、一時代を築いた一大爬虫類のグループ」というニュアンスが込められている。

 生態系の君臨者とは、具体的にどういうことだろうか?

 この問いに答えるために、まず現生の爬虫類に目を向けてみたい(爬虫類の進化系統関係はこちら参照)。三つの大きなグループが主に知られている。ヘビやトカゲ(そしてムカシトカゲ)を含む「鱗竜類(Lepidosauria)」、そして水生と陸生の種を含む「カメ類(Testudines)」が真っ先に思い浮かぶだろうか。前者は今日、9000以上もの種が知られている、非常に多様性を遂げた一大グループだ。カメの仲間も350以上の種が確認されている。

 そして第三のグループとしてこの主竜類が挙げられる。「どんな姿をしているのか? 」。こんな声が聞こえてくるかもしれないが、「ワニ類」といえばほぼ全ての方が水辺にたたずみ獲物をまっているあの独特のイメージを思い浮かべることができるのではないか。

 北米アリゲーターはフロリダ州などで食されるくらいたくさんの個体がいる。ナイル川近辺やオーストラリアの大きな人喰いワニ(クロコダイルの仲間)の姿も、よく知られているはずだ。しかし現生のワニの種はトータルでわずか23にすぎない。

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