次期日銀副総裁に就任する若田部氏(写真:ロイター/アフロ)

 9日の日銀金融政策決定会合では大方の予想どおり金融政策の「現状維持」が決定されました。政策金利は、短期金利(翌日物)が▲0.1%、長期金利(10年)が0%程度に操作目標が据え置かれ、長期国債の買い入れペースは年間80兆円をめどとする方針が維持され、ETF購入も年間6兆円で変わりませんでした。この政策は、黒田総裁、岩田・中曽副総裁の下で2016年9月に導入され、現在まで同じ政策の枠組が続いていますが、3月19日をもって岩田、中曽両副総裁が任期満了となった後も当面はこの政策が続く見込みです。そして4月からは両氏に代わり、雨宮現日銀理事、若田部早大教授が副総裁に就任する公算です。

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今回も「現状維持」に反対票を投じた片岡委員

 この金融政策の現状維持に、今回も片岡委員は反対票を投じました。理由は「消費税増税や米国景気後退などのリスク要因を考慮すると、2018 年度中に『物価安定の目標』を達成することが望ましく、10 年以上の国債金利を幅広く引き下げるよう、長期国債の買入れを行うことが適当である」として2017年7月の就任以降、ほぼ一貫して同じ主張を繰り返しています。

 「消費者物価の前年比は、先行き、2%に向けて上昇率を高めていく可能性は現時点では低い」、「オーバーシュート型コミットメントを強化する観点から、国内要因により『物価安定の目標』の達成時期が後ずれする場合には、追加緩和手段を講じることが適当であり、これを本文中に記述することが必要」という見解も変えておらず、この反対票は今後も継続するとみられます。

リフレ派若田部副総裁の加入で、サプライズも?

 ここで注目すべきは、4月に加入する若田部副総裁(候補)の動向です。同氏は、強力な金融緩和と景気刺激的な財政政策のミックスを強く主張するリフレ派として知られ、片岡委員と似た考えを持っていることから、若田部氏が片岡委員に同調して金融政策の現状維持に反対票を投じる可能性があります。

 仮にそうなれば、金融市場にとって大いなるサプライズです。3月7日に行われた議院運営委員会における所信聴取では、学者と日銀副総裁では立場が違うとの前提を置きつつも「(デフレ脱却の判断は)物価上昇率2%以上が2年間持続すること」、「時期尚早の政策変更でデフレ逆戻りは避けるべき」として金融緩和の出口論に距離を置く見解を示したうえで「経済が疲弊しているなかで増税しても税収を上げるのは難しい」、「(プライマリーバランスの黒字化を)急ぐ必要はない」、「財政政策がデフレ脱却に役立つのはその通り」、「現日銀も金融・財政政策の相乗効果を生かすことに異論はない」として財政政策との協調が有効であると主張。

 追加緩和については「追加緩和ありきではなく、排除もせず予断を持たない」、「理論的に金融政策には限界がないが、そのときの経済情勢などによって実務的には制約もある」、「制度的な制約なども考慮して政策を考えたい」として明言を避けましたが、それでも金融緩和の縮小に否定的であることは明らかで、更なる強化の必要性を感じている可能性もあります。このように筋金入りのリフレ派理論を展開しました。

 同じく筋金入りのリフレ派である岩田副総裁も内心は同様の見解を抱いていたものと推察されますが、2016年9月のYCC導入とその後の「現状維持」に賛成票を投じてきた経緯もあり、後になって反対票を投じるのが難しかったという事情があります。

 その点、若田部副総裁候補は過去の行動に縛られておらず、リフレ派の主張を展開しやすい立場にあります。副総裁就任後、直ちに現行政策パッケージの現状維持に反対票を投じるかは不明ですが、今後、物価物価上昇率が高まるなどして、金融政策決定会合を構成するメンバー9名のコンセンサスが出口の方向に傾斜した際には、片岡委員と共に反対票を投じる可能性があるでしょう。

(第一生命経済研究所・主任エコノミスト 藤代宏一)

※本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。

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