撮影:高橋邦典

 この人物抜きにキューバを語ることができないのが、国の元最高指導者であり、昨年90歳でその生涯を閉じたフィデル・カストロだ。

 彼ほど世界中から愛され、同時に憎まれたリーダーはいなかったのではないだろうか。1959年、革命によって当時のバチスタ独裁政権を倒した彼は、キューバを西半球で最初の社会主義国に変え、その後50年近く国を統治した。冷戦中はソ連と手を組み、共産主義を「敵」とみなす米国と対立。中央情報局(CIA)によるフェデルの暗殺未遂は実に600件以上もあったといわれている。

 特に医療と教育の分野で社会改革を進め、国民の暮らしの向上に貢献した。米国の膝元にある小さな島国にも関わらず、大国の圧力に屈せず理想のために戦い続けた英雄として支持者は多い。その反面、理想とする国づくりのために国民の人権を蹂躙し、反対派を徹底的に弾圧。100万人以上が難民となって国外に逃亡する結果になった。皮肉なことに、独裁者を倒し革命を起こした彼自身が独裁者となってしまったわけだ。

フォトジャーナル<変貌する社会主義国キューバ>- 高橋邦典 第52回

撮影:高橋邦典

 フィデルの死後、オバマ米大統領によって昨年、半世紀ぶりに米国との国交が再開。長年の間、米国による経済制裁によって苦しんできたキューバの人々もこれを喜び、制裁解除への期待は高まった。しかしオバマの功績を帳消しにしたいトランプ大統領によって、再び制裁が引き締められてしまった。ソ連崩壊後、後ろ盾となっていたベネズエラも破綻したから、キューバ経済立て直しは「米国頼み」という状態だ。

 米国に屈することなく国を率いてきたフィデルは、あの世からこんな祖国の現状を見てどう思っているだろうか。

(文・写真:高橋邦典 2017年2月撮影)

※この記事はフォトジャーナル<変貌する社会主義国キューバ>- 高橋邦典 第52回」の一部を抜粋したものです。

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