撮影:高橋国典

 念願のキューバに到着、と思いきや、出発時に空港で預けた荷物が届かなかった。着替えを全て失ってしまったので、せめて下着だけでもと、ショッピングセンターに足を運んだ。いくつか店をのぞくが、一番安いTシャツでも20ドルと驚くほど高い。話に聞いていた国民の平均月給と変わりがないではないか。これなら日本や米国の方がよほど安い。しかもそこは外人や観光客向けの商店街というわけではなく、客も大半は地元人。こういう店が成り立っているということは、 国民の懐事情も変わりつつあるということなのだろう。

 2008年にフィデルが病気で引退し、弟のラウルが政権を担うようになってから経済の自由化が少しずつ進んできた。フィデルは「キューバ革命」によって国を社会主義に変えたが、今度は資本主義を徐々に取り込んでいく、ラウルによる「経済革命」だ。これまで非常に少なかった自営業や、車や家の売買なども認められるようになり、資産を築く者も現れてきた。

 結局20ドルでTシャツを一枚買い、外に出るとウェディングドレスを着た花嫁に遭遇した。国外からの賓客も滞在する、ハバナでトップクラスの高級ホテルで披露宴が開かれるようだ。こんなところを借りられるとは 、かなり裕福なのだろう。

 この先10年もしないうちに、社会主義は影を潜め、国民の間に貧富の差が顕著になっていくだろう。そうなった時、キューバ人たちの心は、どう変わっていくのだろうか?

(文・写真:高橋邦典 2017年2月撮影)

※この記事はフォトジャーナル<変貌する社会主義国キューバ>- 高橋邦典 第52回」の一部を抜粋したものです。

フォトジャーナル<変貌する社会主義国キューバ>- 高橋邦典 第52回