日本人が「せっかち」「正確な時間にうるさい」と外国人から指摘されるように、急成長を遂げるインドの国民も独特の時間の感覚を持っているようです。

 時の研究家、織田一朗氏が『「インド人の時間感覚」にビックリ』を執筆します。

「多弁なインド人」をいかに抑えるか

インドの地方都市の交差点風景(写真:榊達朗氏)

 『世界の日本人ジョーク集』(早坂隆著、中公新書ラクレ刊)は人気の読み物だが、この著者の以前の作に、「国際会議での議長の采配の善し悪し」が紹介されていた。

 「国際会議において有能な議長とはどういう者か。それはインド人を黙らせ、日本人をしゃべらせる者である」。例に挙げられているのはこの2か国の人なのだが、それだけインド人の「多弁さ」は有名で、日本人は「寡黙」で知られているということだろう。

 これまではインドとの交流が薄かったために、日本でこのジョークを実感していた人は多くはないと思うが、近年は交流が増え、インド人の「多弁さ」を実感している向きも多いことだろう。筆者も、インドで開かれたアジアの国際会議に出席する機会があり、インド人のしたたかさを目の当たりにすることができた。

 同書には、「国際的な学会に遅刻し、発表の持ち時間が半分になってしまった場合、各国の人はどうするだろうか」と、「遅刻した時」の対処法も紹介されている。

「アメリカ人……内容を薄めて時間内に収める。
 イギリス人……普段通りのペースで喋り、途中で止める。
 フランス人……普段通りのペースで喋り、次の発表者の時間に食い込んでも止めない。
 ドイツ人 ………通常の2倍のペースで喋る。
 イタリア人……普段の雑談をカットすれば、時間内に収まる。
 日本人…………遅刻はあり得ない」
というものだ。

 ここにはインド人は登場しないのだが、結果はフランス人のパターンだった。

とにかく最後までしゃべる

エア・インディアの昔の時刻表の表紙

 筆者が出席した国際会議は開催地を反映して出席者はインド人の数が圧倒的で、進行プログラムを組んだのもインド人だった。しかし、事前に配布された進行表には気になる点が2か所あった。まず、討論だけでなく基調講演にも、司会者とは別に進行係(タイムキーパー)が立てられていること、全体の時間割が非常にタイトであるにもかかわらず、午前のコーヒーブレークに、40分もの時間が割かれていることだった。日本であれば15〜20分が常識だ。

 だが、会議が始まってインド人の発表が続くと、疑問はすぐに氷解した。発表者の中には、腕時計に時折目をやっている者も見かけるが、持ち時間がなくなっても全くペースを変えずに、発表を切り上げようとしない者が多い。

 終了予定時間が過ぎて10分ほどすると、斜め前に席を置くインド人の進行係が発表者に向かって手を上げて合図をする。それから10分しても終了しないと、今度は進行係が立ち上がる。そうなると、発表者は時計を全く見ずに、司会者と駆け引きをしながら発表を最後まで成し遂げようと試みる。日本人にはまねのできないしぶとさ、強引さだ。

 中には、予定時間を5分過ぎているにもかかわらず、「私の持ち時間はあと2分しかないので結論を急ぎます」と言いながら、それからヌケヌケと10分以上も喋り、進行係に再三注意を受けてようやく結論に至る強者(つわもの)や、持ち時間の15分を3人で分け、それぞれが15分ずつ喋る例もあった。何としても自分が用意して来たことはすべて喋ろうという魂胆だ。