アフリカ諸国のフォーマルな製造業が停滞するかたわらで、インフォーマルなものづくりには、そうした停滞とは異なる可能性が感じられる。

 インフォーマルな事業者とは、許認可、規制、補助など政府の手が届かない企業・業者を指す。ここでは、具体的にものづくりの中から、衣服の縫製、小規模の道路建設業、そして木工家具作りを選び、彼ら・彼女らが、インフォーマルであることの難しさにどのように向き合いつつ、事業を展開しているのかを考えてみたい。そのことを通じて、インフォーマル事業者が将来の工業化・経済発展を担う可能性があるのか否かについてもヒントを見出すことができるだろう。(解説:高橋基樹)

自主的な製造業、インフォーマル部門はアフリカ工業化の希望となるか?(上)

衣服の縫製とアフリカの女性

 最初に取り上げるのは、衣服の縫製である。アフリカでは人口が急激に増えているので、当然衣服への需要もそれにつれて増加している。ここで見てみたいのは、ミシンを使っての縫製業である。19世紀半ばに発明されたミシンは、現在ではアフリカにもかなり広く普及している。その普及の一つのかたちは、モーリシャス、南アフリカ、ケニア、レソト、マダガスカルなどで見られる工場での使用である。こうした縫製業は紛れもなくフォーマル部門に属するが、モーリシャスでは、この国のアフリカでは稀な輸出志向型工業国への高度の成長を牽引した。しかし同国を除く国々では残念ながら、各国の工業化を起動させるような存在にはなり得ていない。

 ミシンを用いた縫製業はこうしたフォーマルな工場で展開しているだけでなく、自営業としても広く行われている。つまり、日本語で言えば「仕立て屋」が多くみられるのである。想像がつく通り、仕立て屋のほぼ全ては、同じ地域社会内の顧客のために小規模な生産をしている。また多くの場合が、インフォーマルな事業者である。ケニアでは、仕立て屋は中間層が買い物をする表通りだけでなく、都市のスラムや、地方の小さな都市でも見られる。これら事業者は自分でデザインした既製服を陳列することもあるが、オーダーメードでそれぞれの顧客に合わせて服を仕立てる。当然ながら、顧客の嗜好にあったものを作らなければ売れないし、生き残っていけない。

 そして、インフォーマルな仕立て屋の多くが、女性である。アフリカでも女性の方がおしゃれな衣服を好むのは日本と共通のようで、その需要に応えるのは、恐らく女性の仕立て屋の方が一般的には得意なのだろう。