中国のITの進歩はめざましく、もはやIT大国と言われるまでに成長しました。しかし中国は一方で、共産党が支配する独裁国家です。ITによる国民の監視や選別が進んでいます。

(イラスト:アフロ)

 中国にはITを使って国民を監視する「天網」と呼ばれるシステムがあります。すでに街中に2億台近くのカメラが設置されており、顔認証技術を使って誰が歩いているのかリアルタイムで追跡しています。警官がグーグルグラスのようなサングラスをかけるだけで、視界に入った人の中から犯罪の容疑者を特定するシステムもすでに実用化されました。

 中国での交通違反の処理はかなり合理的で、違反するとカメラが検知し、誰が違反したのかがすぐに分かります。アリペイに代表されるようなQRコードを使った電子マネーが普及していることもあり、軽微な違反の場合には、その場で、罰金をスマホで払っておしまいになるケースも多いようです。

 国民に関するデータがかなり蓄積されてきたことから、中国政府は犯罪や迷惑行為を事前に防ぐ措置にも乗り出しています。中国で高速鉄道や航空機を利用する際にはIDの提示が必要ですが、過去に不正をした人や、飛行機の中で喫煙した人、社会保険料を納付していない人などは、鉄道や航空機を利用できなくする制度の運用を開始します。

 実は、こうした人間の格付けは民間レベルでも活発に行われています。中国では、アリペイが提供する芝麻信用という個人スコアリング制度が普及しており、支払い履歴などから利用者を格付けし、信用度が高い人にはポイントが付与されるなどの特典があります。中国人の多くはこうした制度をあまり嫌がっておらず、中には自分のスコアがどれだけ高いのかを自慢し、SNSにその点数をアップしている人もいます。

 これらの制度が普及するのは、共産党による独裁国家だからですが、問題は現代のITを使えば、このようなシステムを構築することは簡単であるという現実です。つまりこうした監視社会は、その気になれば、どの国でも実現できてしまいます。

 個人主義が徹底している米国や欧州では、こうした制度に対する根本的な反発が大きいと思われますが、日本はどちらかというと相互監視社会であり、太平洋戦争中などは、隣人の行動を当局に密告するのは当たり前でした。ITが驚異的に発達した今、社会秩序の維持に、個人の情報をどこまで収集すべきなのか、あらためて議論する必要があるでしょう。

(The Capital Tribune Japan)

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