[写真]証人喚問で目を閉じる財務省の佐川前理財局長。改ざんの経緯などについては刑事訴追の恐れがあるとして証言を避けたが何を思うのか(Natsuki Sakai/アフロ)

 森友学園をめぐる財務省の決裁文書改ざん問題が国会を揺るがしているが、丸7年を迎えた東日本大震災の復興政策でも似たような構図が見てとれると、首都大学東京の山下祐介准教授は指摘する。山下氏が注目するのは、復興に関して行政がまとめてきた政策文書。その中の復興の進ちょくや政策の方向性に関する書きぶりに「変化」が感じられるという。その背景には、政治と行政のバランスが崩れたことによる霞が関の「機能不全」があると推察する。

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政策文書に見える「変化」

 「最近の政府の文書を見ていると、『復興は進ちょくしている』と妙に強調され、『それを住民に感じてもらわないといけない』というような言い方になっている」と山下氏は語る。こうした変化は、2016年から始まった「復興・創生期間」の頃から顕著になったという。

 復興・創生期間とは、政府が設定した2020年度まで10年間の「復興期間」のうち後半の5年間のこと。前半5年間の「復興集中期間」は震災のあった2011年から2015年度までで、既に終了している。

 政策文書の書きぶりの変化は、原発事故について特に目立つという。「多くの町村で『避難指示区域の解除ができた』ので『復興は進んでいる』という言い方になっている」。実際、昨年3月31日に、福島県浪江町と川俣町、飯舘村、4月1日には富岡町のそれぞれ居住制限区域と避難指示解除準備区域が相次いで解除された。「しかし本来、解除は一つのプロセスであって復興そのものではない」と言葉を強める。

 「除染しても被ばくするリスクは残っている。覚悟しないと帰れない。今は帰っているというより通っている状態。以前はそういう事情を理解した上で文書がつくられていたが、『復興・創生期間』前後の文書では、ややもすると、帰らない被災者が悪いかのような書き方をしている印象」だと解説する。

 その傾向が典型的に現れていると感じたのが、昨年12月にまとめられた「風評払拭・リスクコミュニケーション強化戦略」だ。

 山下氏が注目したのは、「学校における避難児童生徒へのいじめなど、原子力災害に起因するいわれのない偏見や差別が発生している」という文章。「原子力災害に起因する」のに「いわれのない偏見」は文章として矛盾しているとしながら、次に続く文章を読んで「驚いた」と語る。強化戦略ではこう記されている。

「このような科学的根拠に基づかない風評や偏見・差別は、福島県の現状についての認識が不足してきていることに加え、放射線に関する正しい知識や福島県における食品中の放射性物質に関する検査結果等が十分に周知されていないことに主たる原因があると考えられる。このことを国は真摯に反省し、関係府省庁が連携して統一的に周知する必要がある」

 この強化戦略は「放射線に関する正しい知識の理解」を国民に知ってもらい、「誤解を払拭」することを目的とし、被災地住民の「不安払拭」のために相談員を置くなどの取り組みを進めるとしている。同時に「食べてもらう」「来てもらう」などのキャンペーンも行う。

 しかし山下氏は「これでは差別やいじめの原因は、原発事故ではなく国民の無知だといっているようにも読める。不安や不信を抱く方がおかしいのだというように」と疑問を呈する。「だが本来、霞が関で働く人たちは本来こういう文書を書く人たちではない」。

 一方で、2014年6月の「風評対策強化指針」にはあった「風評の源を取り除く」という文言は消えた。

 山下氏には、政府が避難住民の早期帰還を強引に推し進めようとしているように見える。「早く地域を建て直したいと思っている人も、戻れない原因は今もあるわけだから、本当はゆっくり帰還したい。復興は時間がかかる。今の復興政策は、適切な復興へのプロセスを見据えたものになっていない。でもみんなどこかに遠慮があって言わない」。