人口が減少し、社会の成長が見込めない時代といわれます。一方で、科学技術の進化が、高齢化の進む日本の未来を、だれにとっても暮らしやすい社会に変えるのではないかともいわれています。わたしたちは一体どんな社会の実現を望んでいるのでしょうか。

 幸福学、ポジティブ心理学、心の哲学、倫理学、科学技術、教育学、イノベーションといった多様な視点から人間を捉えてきた慶応義塾大学教授の前野隆司さんが、現代の諸問題と関連付けながら人間の未来について論じる本連載。8回目は「世界平和の方法」です。


なぜ人類は仲良く出来ないのか

[イメージ]人類はなぜ共存できないのでしょうか(ペイレスイメージズ/アフロ)

 人類は、長い年月を経て、なぜ今もなお世界平和を実現できていないのでしょう。要するに、全人類が信じ合い、尊敬し合い、愛し合って、争いをやめればいいだけです。第5回に述べたとおりです。なのに、なぜこんな単純なことができないのでしょうか。

 もちろん、できない理由の客観的な説明はできます。宗教対立、イデオロギーの対立、人種対立、国家主義など、複合的な対立構造が原因です。そうではなく、私の問いは、なぜ人類はこの種の対立を未だに克服して仲良くすることができないのか、という疑問です。

 確かに宗教やイデオロギーの違いは水と油です。どちらかがどちらかを説得したり論破したりするのは簡単ではないでしょう。しかし、宗教やイデオロギーが違っても、皆が違いを認め合い、過去を許し合い、共存する道を選べばいいだけです。なぜそれができないのでしょう。

 過去を許せないから、というのが理由の一つでしょう。しかし、目には目を、の報復合戦が問題を解決しないのは、歴史が証明しているとおりです。憎しみは抑え、過去の過ちは過ちとして理解した上で、許し合う必要があるというべきでしょう。

 人間はそもそも残虐なのだ、という意見もあるでしょう。私たち人間も動物である以上、戦ったら勝ちたいという本能を持っています。これを未だに抑え込む仕組みを人類は持っていない、というのが現状でしょう。しかし、私たちは、本能によって争うのみならず、理性によって共存の道を選ぶことができるはずです。なぜそれがまだできていないのでしょう。

 人間には、征服欲というのもありますね。天下を取りたい、という欲でしょうか。そういう欲も、理性によって抑えることができるはずだと思いますが、なぜ、撲滅できないのでしょう。