ICTを活用して、病院生活でも仕事をこなす弊社社員の宗本(写真は本人提供)

 「御社の在宅勤務という仕組みは、まさに最先端の働き方と言えますよね」

 マスメディアから取材を受けると、毎回と言っていいほど、記者が口にする言葉だ。

 政府の「働き方改革実行計画」でも「企業は社員に柔軟な働き方を〜」と提唱されているように、今、世間では在宅勤務の導入に向けた動きが盛り上がっている。

 といっても、盛り上がっているのは政府とそれに便乗して、見せかけだけの在宅勤務をPRして売り込む企業だけである。筆者が見る限り、実際の中小企業のほとんどには普及していないだろう。

【連載】寝たきり社長の働き方改革

 仙拓には、障がい者だけでなく、健常で働く主婦の方もいる。それぞれ身体的な面や環境的な面での事情はあるものの、在宅勤務というワークスタイルには非常に満足している様子だ。

 なかには病院で暮らしながら働くスタッフもいる。宗本智之という30代後半の男性で、筋肉が萎縮する「筋ジストロフィー」という難病を患っている。筋ジストロフィーは進行性の難病で、次第に日常生活すべてにおいて介助が必要となり、生活に不自由な部分も多くなる。

 宗本は、仙拓を立ち上げてから数年後、筆者が誘う形で仲間になった。仙拓が初めて雇ったスタッフである。出会いのきっかけはフェイスブックだ。宗本の経歴や、筆者と似た境遇ながら仕事がないことを、フェイスブックのタイムラインで知った。そこで、メッセージを送ってみた。

 「一緒に働いてみませんか」

 すると、すぐにこんな返信があった。「なんなりと指示してみて下さい。PCだけでできることなら、不可能なことはないと思います」

 そして、こう続けた。「いつも介護してくれる母に、自分で稼いだお金で美味しいケーキを買ってあげたいですね」

 詳しく聞くと、3歳で「筋ジストロフィー」と診断され、小学校3年生で車いすの生活になったという。そんな状況にも負けず、近畿大学理工学部へ進んで数学を専攻した。寝たきりでも自宅で教授の指導を受け、07年に博士号を取った逸材だ。

 宗本は常時人工呼吸器をつけており、動くのは両手の親指だけだが、特別な装置を使ってパソコンを操る。数字に強いということもあって、アクセス解析の業務を任せたが、短時間勤務の中でも実に素晴らしい働きをみせる。

 かれこれ雇用してから4年近く経つが、宗本は今、病院内で生活している。親が高齢なことや在宅介護の負担が限界となり、医療面での設備も整っている入院生活へと切り替えた。しかし、在宅だろうが、病院だろうが現時点でも宗本はこれまでと同じように働いている。

 筆者は「寝たきりでもICTを活用すれば社長として活躍できる」と力説してきた。実際、仙拓の社員7人全員が在宅勤務である。正確に言うと宗本は病室勤務だが(笑)。障がいのあるなしは関係がない。そして時間と場所も選ばない。そんな働き方が仙拓では実現できているのだ。