OP戦ではさっぱりの阪神ロサリオだが、あのフィルダーも最初は苦労した(写真・黒田史夫)

 セシル・フィルダーを覚えているだろうか。

 熊のような巨漢。村山阪神の最下位脱出の救世主として1989年にやってきて、たった1年だけだったが、横浜スタジアムの場外にまで飛ばす驚異的なパワーで38本塁打、81打点、打率.302の数字を残した。自分でグラウンドに叩きつけたバットが跳ね返ってきて手を骨折。嵐のように阪神を去った伝説の助っ人である。
 
 フィルダーは翌1990年にメジャー復帰すると、デトロイト・タイガースで51本塁打、132打点で2冠王を獲得。翌年も2冠王となり、日本経由の“逆輸入アーチスト”として名を馳せ、後に巨額契約でヤンキースへ移籍して世界一まで経験している。

 なぜ今、フィルダーの話をするのかと言えば、彼もオープン戦では大不振に苦しんでいたからである。

 今日、東京ドームでの巨人戦で開幕を迎える阪神の命運を握るのは、開幕4番を任される新外国人のウィリン・ロサリオと、開幕第2戦(31日)の巨人戦先発が決まっている藤浪晋太郎の2人だ。

 桑原謙太朗の勤続疲労が心配だが、石崎剛がいいし、2段モーションを復活させた藤川球児が元気で、マテオ、ドリスのリーグ屈指の勝利方程式は健在。ここが、阪神の強みであり、Aクラスを保持できそうな根拠となるが、優勝争いに参戦するためには、この投打の主軸2人の活躍が重要なポイントとなる。

 特にキーとなるのがロサリオである。
 
 昨年の本塁打数チームトップは中谷将大の20本だったが、開幕1軍から外れた。続くのが福留孝介の18本、糸井嘉男の17本。30本以上打てるホームランバッターを渇望していたチームは、推定3億4000万円の大枚をはたいてロサリオを獲得した。もしロサリオが期待を裏切れば、また今季も一発不足に苦しみチームの勝ちパターンが減る。

 だが、そのロサリオは、オープン戦で打率.143、1本塁打、4打点と低迷した。35打数で11三振と三振率が高い。外の変化球を追いかける傾向にあり、結果を求めているようなバッティング内容。自ら特打、特守を志願するほど、真面目な性格が、今のところ悪い方に出ている。

 キャンプの最初に見たロサリオは違っていた。スイングスピード、とくにヘッドスピードが早く、ゲージを移動させないと、バットが当たってしまうほどフォロースルーが大きい。柔らかさがあって、ボールに逆スピンをかけて、ヒッティングするため、打球が思いのほか伸びる。

「センターから右を意識しているんだ」

 そういう話をしていた。他球団のスコアラーも「柔らかさと対応力がある」とマークしていた。そして、この頃は、昨今、議論になっている軸足の右足が、スイングと同時に大きく動くこともなかった。紅白戦などで3試合連続アーチをマーク。金本監督を「チームの軸ができた」と安心させていた。