2012年撮影:高橋邦典

 インドでそこそこの規模の街なら、商店街で必ず見かけるのがカラフルなサリーを扱う衣服店。金銀の輝く宝石を身につけた広告の中の女性たちも、必ずといっていいほどサリー姿だ。

 カレーにヨガ、タージマハルと、インドといって連想するものは多いが、サリーもその一つだろう。衣服とはいえ、袖や肩幅など仕立ててあるわけではなく、長さ5~8メートルほどの一枚布。これを体に巻きつけていくのだが、慣れていないとなかなか着こなすのが難しい。色鮮やかで優美、かつ艶っぽくもあるこの衣装は、世界で最も美しい衣装の一つだと思う。しかも日本の着物のように特別なものではなく、日常に着る普段着だから、いつでもどこでも見かけることができる。風通しがいいので涼しいうえに動きやすい、美しさと機能性を備えた理想的な衣装でもある。

フォトジャーナル<世界の市場の風景>- 高橋邦典 第53回

2012年撮影:高橋邦典

 体の一部に布を垂らしただけのサリーの原型は紀元前からあったようだが、現在のように胸隠しのブラウスを着るようになったのは英国占領時代から。それ以前は下着なしに肩からサリーをたすき掛けにしただけで、肌の露出が多かった。これは不道徳であると、英国人たちがサリーの下にブラウスを着ることを奨励したという。典型的な西欧の道徳観の押し付けでもあるが、結局はそれが広がった。今では様々な職に従事する女性用に、脱着が楽な簡略型サリーも普及した。エア・インディアに乗った人なら知っているだろうが、機内ホステスはみなサリー姿。 素早く着れて、かつ型崩れしにくいようにピン留めされた、ユニフォーム・サリーである。

 一口にサリーと言っても、北部から南部まで地方によってスタイルも様々。 カレーと並んで、インド文化の代表といってもいいほどだ。「サリー語らずインドを語るな」である。

(2012年4月撮影)

※この記事はフォトジャーナル<世界の市場の風景>- 高橋邦典 第53回」の一部を抜粋したものです。