「2番・遊撃」で出場したロッテ新人の藤岡があわやサイクルの猛打賞デビュー。新生ロッテの象徴になりそうだ

 試合時間は、ちょうど5時間になろうとしていた。ライトスタンドをビッシリと埋めたファンは誰も帰らない。「史上最後方からの挑戦」。そう開幕シリーズに銘打った新生ロッテへの期待感である。
 延長12回、6人目の益田直也が二死一、二塁から途中出場の藤田一也にライト前へタイムリーを落とされたところで力尽きた。3月30日。ロッテの開幕戦。それは後味の悪い敗戦ではなかった。
「則本に球数を投げさせることができたし、いい形は作れたが、前半にチャンスで点を取れなかったのがね。そこですかね」
 初陣を白星で飾れなかった井口資仁・新監督の言葉に悔しさが滲む。
 勝利への執念―――。
 初回。一死一、二塁から「3-6-1」と渡る併殺プレーで、一塁のカバーに入った涌井秀章のプレーがセーフとジャッジされると、すぐさまベンチの前へ出て審判に「リクエスト」をジェスチャーで伝えた。今季から導入されることになったリプレー検証制度だ。12球団の適用第一号。「きわどいプレーだったからね」。 リクエストは見事に成功して、ジャッジは覆り、ピンチを切り抜けることになった。
 ちなみに「リクエスト」についてだが、ファンにわかりやすくスロー映像がビジョンにも映し出され、審判団の協議も、想像よりも非常に敏速だった。

 楽天というよりも、日本を代表するエース、則本昂大を相手に、1、3、4回と三塁まで走者を進めたが得点につなげることができなかった。2-3の敗戦スコアを振り返れば、井口監督が悔やむのはよくわかる。
 特に立ち上がりにトップの荻野貴司が三塁線を破る二塁打で出塁、続くルーキーの藤岡裕大の左中間を襲った打球が、外野手のグラブをかすめるようにして抜けたのだが、荻野が打球の判断を誤りホームに生還することができなかった記録に残らないボーンヘッドが痛かった。

 試合前に井口監督は「変わったロッテをお見せしたい」と言った。

 昨年は勝率.383で借金を「33」も抱えての屈辱の最下位。その中に井口監督もいた。何が足りなかったか、そして、やれることはなかったのか。引退即監督に就任した井口監督だからこそ、肌で感じたことに、世界一を経験したメジャーでの経験を加味して、秋季キャンプからチーム改革に乗り出してきた。
 まだ短期間ではある。
「変えること」は、そう簡単ではないはずだが、開幕戦に「変わったロッテ」の兆しは見えた。

 ひとつは井口監督が推し進めてきた機動力である。