アフリカ諸国のフォーマルな製造業が停滞するかたわらで、インフォーマルなものづくりには、そうした停滞とは異なる可能性が感じられる。

 インフォーマルな事業者とは、許認可、規制、補助など政府の手が届かない企業・業者を指す。ここでは、具体的にものづくりの中から、衣服の縫製、小規模の道路建設業、そして木工家具作りを選び、彼ら・彼女らが、インフォーマルであることの難しさにどのように向き合いつつ、事業を展開しているのかを考えてみたい。そのことを通じて、インフォーマル事業者が将来の工業化・経済発展を担う可能性があるのか否かについてもヒントを見出すことができるだろう。(解説:京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科・神戸大学名誉教授・高橋基樹)

【連載】アフリカー岐路に立つ大陸

アフリカの社会に根を広げる家具製造

 今アフリカのものづくりで急速な勢いで広がりを見せているものの一つが、木工家具製造である。衣服と同様に、人口が増えるにつれて住居用の家具への需要も高まっている。貧困層でも少し現金収入のある人々は、大小のテーブル、ベッド、各種いすなどを買いそろえようとする。都市でも農村でも、決して大多数とは言えないが、一家を構える場合には相当多くの人々が、少々貧しくともソファなどを持とうとする。アフリカの庶民の家にソファがあることを怪訝に思う読者もいるかもしれないが、親戚や近所との密接な付き合い、その手段としておしゃべりに時間をかけることは広くみられることであり、そのために、ゆったりと座れるソファはとても有用なのだろう。

【写真4】ナイロビのウルマ地区の路肩に陳列されているソファ(撮影:高橋基樹 2018年)

 さらに、アフリカの大都市で、私たち外国人たちの目を引くのは、家具類が路肩の野外に並べられ、売られている光景である。【写真4】はケニア・ナイロビでキベラに次いで大きいスラム、マダレに隣接するウルマ地区にあるソファ販売店の数軒を撮ったものだが、陳列されているソファの外見は、なかなか立派である。ただ、トタンの屋根と壁でできた店の建物は、日本人の目から見ると、掘っ立て小屋のようなものではあるが。

 ウルマでは、ジュジャ通りという幹線道路の路肩2~3キロメートルの範囲にわたってソファを含む家具店が軒を連ねている。スラムに隣接していることからも分かるように、この地区には外国人や富裕層はあまり訪れないので、ソファなどを買っていくのはナイロビおよび周辺の一般庶民である。当然、価格があまり高いと買ってもらえないので、製造コストは低く抑えられなければならない。これが、ウルマの家具業者の大きな課題である。そこで、庶民向けの家具製造がどのように行われているのか、ソファを例にとって調べてみた。

 ウルマばかりでなく、ナイロビには家具を製造・販売する業者が多数存在するが、そのほとんどは、使用する木材を同じナイロビのギコンバ地区の業者から購入する。ギコンバはナイロビの木工関連産業の心臓部ともいえる場所で、ここに国内外からマホガニー、ブルーガム、松、ヒノキなどが運び込まれ、建材や家具の材料に加工される。その加工材料が、流通を経て各地区に流れていく。

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