[写真]習近平首席と金正恩委員長の会談を報じるテレビ画面。左端は金委員長の夫人・李雪主氏(ロイター/アフロ)

 昨年ミサイル発射実験を繰り返し、6度目の核実験を強行した北朝鮮が、2018年に入り、次々と「軟化」姿勢を打ち出しています。2月の平昌冬季五輪を手始めに南北融和ムードを演出し、4月末には南北首脳会談、そして5月までについに米朝首脳会談が開催される運びになりました。ただアメリカのトランプ大統領と北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長によるいきなりのトップ会談は、開催そのものや成果について懐疑的な見方があります。

 北朝鮮側は「軍事的脅威の解消」と「体制の保障」を条件に「非核化」の可能性に言及していますが、それは可能なのか。首脳会談ではお互いに具体的にどのような要求をするのか。元外交官で平和外交研究所代表の美根慶樹氏に寄稿してもらいました。

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 北朝鮮が核兵器とミサイルの開発を進めるのに伴い、米国との関係は悪化していきました。特に2016年以降、北朝鮮が水爆実験や大陸間弾道ミサイル(ICBM)を含む各種ミサイル実験を頻繁に行うようになり、状況は一層悪化しました。2017年1月に就任したトランプ大統領は、金正恩委員長との間で激しい非難の応酬を繰り返し、軍事衝突の危険も高まっていました。

 そんな中でのトランプ大統領と金委員長の首脳会談合意です。米朝間には長年にわたる複雑な事情があり、1回の会談で解決できることは限られているでしょう。しかも両首脳は十分な準備を経ないでいきなり対面するので、話し合いがどこまで進むか予測困難ですが、一時的にせよ、緊張状態は緩和されています。

 北朝鮮は現在、核やミサイルの実験を控えています。また、米国と韓国が例年2月末から3月にかけて行う米韓合同軍事演習は平昌五輪終了後まで延期されていましたが、4月1日に開始されました。これに対し北朝鮮は、金委員長が韓国大統領の特使に対して述べた通り、反対しないでいます。

突然の首脳会談が決まった事情

[写真]平昌五輪の開会式には文在寅大統領のほか、金委員長の実妹・金与正氏やペンス米副大統領らも出席(ロイター/アフロ)

 米朝間で突然、首脳会談が行われることになったのは、どういう事情からでしょうか。

 金委員長は昨年11月末頃、それまでの強気一辺倒の姿勢から協調的姿勢に転じました。北朝鮮は否定していますが、国連安全保障理事会での北朝鮮制裁決議が強化され、さらに米国は独自に強力な制裁措置を実施したため、金委員長は北朝鮮経済への悪影響を懸念せざるを得なくなっていたと思われます。

 しかしその時、金委員長が述べていたのは、核とミサイルの開発が完成に近づいたことでした。

 ともかく、金委員長は今年の「新年の辞」で北朝鮮の平昌五輪への参加意向を示すなど、まず韓国との関係改善を進め、実妹の金与正(キム・ヨジョン)党第1副部長を韓国に派遣しました。

 それに対する返礼の形で、韓国大統領府の鄭義溶(チョン・ウィヨン)国家安保室長が文在寅(ムン・ジェイン)大統領の特使として平壌を訪れました。さらに、金委員長の意向を持ち帰った特使一行は訪米してトランプ大統領に会い、金委員長の発言内容を伝えました。これにトランプ大統領が応じて、首脳会談が実現することとなったのです。

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