大谷は2度目の先発であわや完全試合のピッチングを見せた(写真・アフロ)

 実は、初先発を終えたとき、大谷翔平(エンゼルス)が、左打者に1球しかスライダーを投げていないことが少し気になった。

 先日、THEPAGEに掲載した「疑念ボールはなぜメジャーで通用したのか」という記事の終わりに書いた「ただ1点気になること」である。

 大谷のスライダーは曲がり幅が大きいことが特徴。1試合目はスライダーの横の動きの平均値が38.1センチもあった。これは、右打者にしてみればぶつかってくるような感じなので、どうしても腰が引けてしまう。一方で、左打者には軌道が見やすい。

 となると、それなりの制球力が必要となる。効果的に使うとしたら、田中将大(ヤンキース)や前田健太(ドジャース)、そしてダルビッシュ有(カブス)のように“バックフット”を投げられるかどうか ── 。

 ただ、大谷とスライダーの軌道が酷似するダルビッシュは今年、すでに2回もそのスライダーをスタンドへ運ばれており、彼レベルでも、一歩間違えばというぐらい、左打者に投げるには、リスクが大きい球だ。

 かといって大谷は、左打者を4シームとスプリットだけで抑えられるのか ── 。

 そういう視点で8日(日本時間9日)、2度目の先発となるアスレチックス戦を見ていたが、それを大谷は、別の方法できっちりと補っていた。

 結論から言えば、左打者には1球もスライダーを投げなかった。4シームとスプリット以外は、カーブを2球投げただけ。それでも相手を翻弄したのは、スプリットで球速差をつけたからではないか。つまり、同一球種で巧みに緩急をつけたのである。

 4回、マット・ジョイスと対戦した時には、68マイル(約110キロ)のカーブでストライクを取った後、84マイル(約135キロ)のスプリットをファールされた。3球目は2球目とほぼ同じコースに87マイル(約140キロ)のスプリットを投げ、一塁ゴロに仕留めた。しかもこの球はややチェンジアップ気味に沈んでいた。9日になって公開されたStatcastのデータを見ると約5センチ分、2球目と比較して、横の動きが大きかった。この程度なら軌道を変えたとは言い難いが、少なくとも意図的に球速を変えたことは間違いない。

 ジョイスとの3度目の対戦でもそうだった。初球は83マイル(約134キロ)のスプリット。ジョイスは空振りをしたが、全くタイミングが合っていなかった。

 スプリットの球速を変えたのは右打者に対しても同様で、5回にはクリス・デービスと対戦すると、初球から3球連続でスプリットを投げたが、83(約134キロ)、87(約140キロ)、89マイル(約143キロ)と徐々に球速を上げた。

 アスレチックスの選手らは前回も対戦しているため、スプリットならこれくらい、というタイミングのイメージがある。

 デイビスも前回、6回に対戦した時は3連続でスプリット(89.9、90.4、88.3マイル)を見ている。それだけに彼はスプリットの球速のイメージが出来ていたはず。しかし、1打席でこれだけ違うと合わせにくい。

 さらにこの日は、4シームでも球速差をつけており、2つの球種が3つにも4つにも見えたのではないか。